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黄龍妖魔学園紀 ~いめくらもーどv~

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 瑞麗の言葉に、村雨は疲れ果てたコメントをつける。
「ロゼッタ協会については、一応、ちょっかいを出してくる存在と認識しているようだがな」
「あそこの申し出じゃあ、なぁ」
「泥棒が、セキュリティの強化に協力いたしますといって信じるようなものだろう」
 つけくわえられた瑞麗の言葉に、二人は揃って渋面を作った。しばしの間、あまり居心地の良くない沈黙が降りた。だが、やがて村雨は息を吐き、軽い口調で流れを変える。
「ま、急がずやりますかね。センセイの誤解を宥めるのと同時に」
「彼がいわゆる超科学的手法で過去の意識をうけついでいたり、もしくはその――クローンだったりする可能性もないわけではない。だとすれば、他の《墓守》に比べ多少程度がマシなだけで、マインドコントロール下にあることは変わりないだろう」
「ローティーンの少年を預けてくれれば、半年で立派な神の戦士に仕立て上げることができるって言葉もあるそうだ。生まれた時から《墓守》の宿命というなら、クローンかどうかなんてなあ些細な違いだろ。って、アンタ保険医じゃねぇか。健康診断結果のひとつやふたつ、あるんじゃねぇのか?」
「守秘義務――と言いたいところだが、高校の健康診断程度でそんなことがわかるものか」
「うちのは、少なくとも心肺機能だ、体年齢だ、鬱病だなんだっつってたが。平均がどれほどのものかはしらんが、少なくとも明らかに年齢が違うなんてのはわかるんじゃないのか?」
「……皇神といっしょにするな。泊りがけ人間ドック並の検査プラスアルファまでやっていたんだろう? まぁ、皇神ですらおまえの年齢詐称がばれないんだ。普通は分からない」
 村雨の言葉を、如月は呆れたように否定した。
「いやまぁ、私立だし。――って、俺は現役だっつーの」
 いつものやり取りに、重苦しい空気が少し緩む。彼らの様子を見ながら、瑞麗は笑みを浮かべた。
「残念ながら、そこまでの検査はないな。一応、一般生徒と同様に彼も受けていて、特に目立った結果は出していない。――つけくわえておくならば、いわゆる役員、執行部の人間も同様だった」
「なるほど。ロゼッタ協会の超テクノロジーか、M+M機関の霊的検査でも行えばともかく、そのへんの健康診断程度じゃ尻尾は出ない、と」
「阿門家との交渉は、秋月が出た方がいいだろう。僕の方(ひすい)は、術師系ではない」
「ま、段取りは俺がやるとしても、最終的には東の頭領にご出馬願うさ。――しかし」
 不意に村雨は眉を寄せた。
「遅いな」
 保健室の時計をちらりと見て、如月が後半を引き取る。
「……ああ」
 瑞麗は頷き、携帯電話を見た。
「センセイの寝顔を確かめるだけなら、そろそろ連絡が来てもいいはずなんだが……」
 そう言って、村雨は自らの携帯電話を取り出し、眺める。瑞麗のものも、村雨のものも、着信の記録はない。
「こっちからかけてみるのも……」
「忍び込んでいる最中だったりすると、目も当てられんな」
 腕を組み、如月は目を閉じた。
 壁の時計が、やけに大きな音を立てて、分針を進めた。
 次の瞬間、着信音が鳴り響いた。


「やられた! 標的(ターゲット)に見つかった!」
 携帯電話が吐き出した声を聞いた瞬間、瑞麗は細い目を見開いた。
 ただならぬ様子に、如月と村雨の間に緊張が走る。
「……今はどこだ」
「寮の機関室だ。クソっ。こんな簡単に意識を奪われるとは。まぁ、眠らされてから、十分も経ってないってのは、不幸中の幸いか」
「どこに行ったかはわかるのか?」
「いや。だが、さっき壬生と弦月(バイト)に連絡を取った限りじゃ、校舎や職員宿舎方面には向かっていないらしい。もっとも、この広い敷地で、動いてる人間を偶然見つける可能性の高低はともかくとして、だ」
「わかった。こちらは、今から《墓》に向かう。そちらは、御子神とともに姿を消した人間がいないか寮内を確かめろ」
「わかった。終わったらすぐにこちらも《墓》へ向かう」
 鴉室の返答を聞くなり、瑞麗は終話ボタンを押した。そして、すでに立ち上がり、扉の前に立つ村雨と如月を見る。
「その分じゃ、センセイが動いたようだな」
「ああ。行方はハッキリしていないが、今から十分ほど前に、鴉室を眠らせたらしい。ヤツの失態とはいえ、起きただけマシということか」
「馬鹿な。それだけで十分だったんだよ。あの御仁が、武闘派の真似事なんざできるはずがない」
 否定の言葉を口にする村雨の背後では、すでに如月が廊下に飛び出していた。そして、そのまま駆け足で外に向かう。
「アンタ、壬生の携帯はわかっているな? ヤツを《墓》に呼んでくれ」
 そう言うと、村雨は踵を返し、如月を追った。追いながらも、携帯電話を取り出し、何処かへかけはじめる。
 その背を見送り、瑞麗は頷いた。そして、終話ボタンをおしたばかりの携帯を開き、壬生へとかけはじめた。