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カーテンをあける気も起きない

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カーテンを開ける気も起きない

 目を覚ますと、既に日が昇っていた。
 両親と妹は用事で出かけていて、自分は留守番。昨日は遅くまで部活があったのだから仕方ない。
 「……………あー」
 声を発しても何も起きない、当たり前のことだが。
 『そろそろ起きないとな』
 頭ではそう考えてみるけれど、身体は重い。寝坊してもいいと分かっている日で今日の予定は何もなく、ただひたすらに暇をもてあますだけだと分かっているから余計に動けないのかも知れなかった。
 普段なら、こういう日は確実にヤマトの家に入り浸るところなのだが生憎と
ヤマトは軽音部の合宿で数日は戻らない。しかも最終日はライブときた。
 「やべーよなぁ…」
 会えない。連絡も取れない。慣れていることだが、毎回憂鬱な気分になるのは何故だろう。しかも悪いことに、帰ってくる前には女の子たちに黄色い歓声を山のように浴びることになるのが分かっている。
 嫉妬、と言うほど暗い感情ではない。ヤマトの片側はガブモンで塞がっているがその反対側は自分の場所だと決まっているから、別に焦る事もないのだ。
 「オレはセンチメンタルなんて似合う奴じゃないはずなんだけどな」
 似合わないのに、そんな気分になっているのがうっとおしい。振り払うことが出来ればいいのだけど、身体を動かす気にもなれないのが面倒だ。
 「…あと何日だっけ」
 視線をめぐらしてカレンダーを見た、申し訳程度に印をつけているので特に
考えなくても日数は数えられるようにしてある。
 「2日か…長い…な」
 そうつぶやいたとき、メールの着信音が部屋に響く。のろのろと手を動かして携帯を持ち上げ、新着メールを確認すると大輔からだった。
 「『今日暑いですし、暇ならデジタルワールドまで泳ぎに行きませんか』」
 メールの内容を読み上げて、むくりと身体を起こす。
 「暇してるよりはずっといいか…アグモンにも会えるし」
 返信をかえして、とりあえず着替えを始める。身体を動かせば少しは憂鬱な
気分も晴れるだろうし、少なくとも時間は早く過ぎるはずだ。
 そんなことを考えながら、適当に何か持っていくものはないかと部屋を見回す。
 特に必要そうなものは見当たらないので、海水浴の準備をするべくかばんを
手に取ってタオルや水着などを適当に放り込んでいく。
 家を出るときになっても結局、部屋のカーテンは閉められたままだった。