夢を見なければ、不安にもならないかも
―置いて行かれる夢を見て、目が覚めた。
「なん…だ、夢か」
窓の外はまだ暗い、枕もとの目覚まし時計を見れば午前2時。いつもなら熟睡しているはずの時間だ。
「おかしーだろ…なんで飛鳥なんかの夢見んだよ」
分からないのは自分の感情。ストレスを感じているのは間違いないのだが。
『女の子なら皆好き』などと、想像を絶する発言をこなしキザでカッコ付けで見掛け倒しのヘタレ…の割りに強引な面がある。
よりによって、そんな奴に襲われた。しかも何度も。
「うー」
流石に女子に手を出すのはためらった結果、貧乏くじを引いたのが自分だったのかも知れない、とは思った。
なんだかんだ言いつつ、結局拒めない自分がいるのがおかしい。
その気になれば蹴り倒してでも逃げられるはずなのに、迫られると何故か雰囲気に流されてしまう。
しかも、嫌いになれない。
険悪な雰囲気になることは少なくない、でも一緒に戦う以上は口を利かないといけないし、自分達がケンカしていると周りが困るのも分かっている。そもそも飛鳥が飛行能力の担当である以上、空中戦に持ち込まれるとメインパイロットの自分だけでは戦えない。
「なんで…こんなに不安なんだよ」
女子にキャーキャー言われている飛鳥を見るとイラッとする。のが最近多くて、それも気分がよくない理由の一つだ。
不安で仕方ない、のはなんとなく分かってきた。じゃあ、なにがそんなに不安なのかと自問自答する。
結果、頭が痛くなってきて、考えるのを止めて眠ってみれば見た夢は飛鳥に置いて行かれる夢。
なんで飛鳥なんだ。不安の原因は飛鳥なのか?
「あー…頭ぐるぐるしてきた……」
飛鳥が原因なら、明日もしセクハラされたらぶん殴ってみるのもいいかも知れない。少なくとも、自分には殴る理由が大いにある。
「夢なんて、見なけりゃいいのに」
また眠くなってきたので、うとうとしながらそうつぶやく。
夢で飛鳥の顔を見るから、また不安になるのだ。それなら、最初から見なければいい。
そんなことを考えながら眠りに落ちる。イライラの原因が焼きもち、つまり飛鳥への好意だと気づくまで、まだ時間がかかりそうだった。
作品名:夢を見なければ、不安にもならないかも 作家名:如月