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灯千鶴/加築せらの
灯千鶴/加築せらの
novelistID. 2063
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深みに棲む

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深みに棲む

俺と荒木がルームシェアを初めて数ヶ月になる。
荒木が出掛けたら掃除名目で部屋に入って、菓子を回収するのが日課だ。
回収しているのにまた次の日には必ずあるのが不思議だ。
あいつの経済観念は大丈夫かと気になるが、睨めばさしあたり食べるのを止めるからそれ以上うるさくも言えない。
ゴネたら使う奥の手も、今のところ良く効いているし。

「お前は日本のために必要な選手なんだ――逢沢傑の欠けた穴を埋めるんだろう?」

こう言えば荒木は大人しく袋を置くし、殊勝な顔で「外走ってくらぁ」と出掛けていく。
荒木にとって逢沢傑が未だに大きな存在であると、その度に再確認して胸が痛む。

それでも。
随分と立ち入りを許された俺でも言葉の届かない荒木の奥底がまだあって。
だけどそこには確かに彼が居てくれることで、安堵している部分も、確かにあるのだ。

少なくとも、逢沢傑が立ち入れる場所では、荒木の心は孤独にはならないから。

「……全く、何でこんなに早く――」

天に愛されすぎて早世してしまった伝説の10番を思う。
彼と、荒木をダシに酒を交わせたらきっとそれも、楽しかったろうに。

Fin.


---
織田くんはさしすせそ完璧そうwという春華さんとの会話で思いついたもの。
特にしつけが…対荒木で(笑)

というネタだったはずなのに、どうしても荒木が傑さんを好きでこうなった。
だけどちゃんと恋人(未満)として織田くんも好き、と。
多分、比べられるものでも、並ぶものでもないんだろうなぁ…。

11.06.13 加築せらの 拝
作品名:深みに棲む 作家名:灯千鶴/加築せらの