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灯千鶴/加築せらの
灯千鶴/加築せらの
novelistID. 2063
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ルームメイト

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ルームメイト

江ノ高を卒業して一年半。
当初はこれから新しい場所で新しい人間関係の中で、ほとんど全ての事を一から築き上げていくんだろうと思っていた。
ジュニアユースを抜けて高校サッカーに来た時のように、ほんの少しだけ過去との繋がり――あの時は兵藤だけだった――を持って、将来に繋がる夢のために大学生活を送るんだろうと思っていた。

「あっ、オイ荒木! 何野菜残してんだよお前」
「だってこれ嫌いなんだよー」
「なんだよ、じゃねぇ。折角織田が栄養計算して作ってくれてんだぞ? 文句言うな」

それが、どうした事だ。
今俺の目の前には兵藤と荒木が居て、三人で食卓を囲んでいる。
二人が俺の部屋に泊まりに来たとかではなく、ルームシェアの相手としてだ。
つまり、三人で一緒に暮らしている。どうしてこうなった、と時々思わないでもない。

……別に、ルームシェアにも、相手がこいつらであることにも、不満は無いが。
俺と兵藤は学部こそ違うが同じ大学で、またチームメイトとしてプレーしている。
二人して大学の寮の抽選には漏れてしまったし、生活時間帯が同じ俺と兵藤がルームシェアを考えるのは当然の成り行きだった。

そこに、卒業して真っ先に遠くへ旅立つものと思っていた荒木が、転がり込んできた。
意外と地元愛もあったらしく、チームがJ1に昇格するまでは湘南にいるというので、今や俺はすっかり荒木の管理栄養士だ。
サポーターとしては残念なことに昨シーズンもあと一歩のところで昇格争いに敗れたため、荒木との生活が今年も継続しているわけだ。

俺が食事の面倒を見ている限り荒木を太らせることは無いだろうし、それでもし太ってきたならどこかでつまみ食いしているのがバレバレだ。
チームのエースとしても日本代表の10番を争う身としても、いい加減自覚はあるから太りはしないだろう……と、信じても居るのだが。

「……よーし兵藤、荒木羽交い締めにしろ。何が何でも食わせてやる」
「おっ、今日はノリいいじゃん織田♪ 任せろー!」
「ぎゃあぁぁマコ何っ、織田まで、ちょっ、ヤメ……んんんー!」
「おとなしく食え、馬鹿」

兵藤が羽交い締めにして、俺が騒ぎたてる荒木の口に放り込む。
十日に一度くらいはやる光景だが、学習しない荒木も荒木だ。
もうコミュニケーションの一環として成立しているお約束みたいなものなんだろうが。

ホウレン草のピーナツ和えを小鉢ひと皿分食べさせ終えて、中身の減っていたグラスに麦茶を注いでやる。
そのタイミングで兵藤が手を離して、荒木が麦茶に飛びつく。

「お前ら何その無駄に完璧な連繋……」
「いや、『イエローカード』の連繋には負けるがな」

ぐったりした荒木にケラケラ笑いながら兵藤が空になった食器を片付け始める。
思い出したように荒木が洗濯物を取り込みに行く。
荒木もたまのオフだし、家事が全て済んだら今日は三人で近くの公園にでも行こうか。
フル代表召集も秒読みと言われている荒木から直に手ほどきを受けられる機会などそうない――こんな、共同生活でもしていない限り。

互いにメリットがある生活が始まって一年半。
荒木がアウェイの試合で家を空ける日は二人だけの食卓になる、それが少し寂しいよな、なんて話は俺と兵藤だけの秘密だ。
湘南がJ1に上がったら、荒木はチームを離れてしまうんだから、いずれは常になることの筈で。
……なるよな、きっと。少なくとも俺が大学を出るまでには昇格してほしいけどな。

最短であと半年、最長で俺たちが卒業するまでの二年半。
大切な友人で、元と今のチームメイトで、同じ夢を追う仲間で、ライバルで。
そんな二人との生活が、いつまで続くか少しだけ、楽しみにしている俺が居る。



Fin.


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1000打記念短文企画第2弾、ツイッタで春華さんから頂きましたリク、
『もしも荒木+織田+兵藤が共同生活をしたら』でした!(´∀`*)
羽交い締めネタは絶対に入れようと思ってました…あと、管理栄養士織田くん(笑)
設定の書き込みが楽しすぎて1000字で収まりませんでした(ノ∀`)
お持ち帰りは春華さんのみ自由ということで。
春華さん、リクエストありがとうございました!


11.04.30(14:40) 加築せらの 拝