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女子だったらジーノに喜んでるところだと思う。
笑えないのは30半ば、パートナー有り愛人有りだから?
そんなのよりまずオトコだとか職場内だとか。
ゴトーと村越をどう思うところなのかがこの辺りで面倒くさくなってくる。

面倒なのは村越だけかも。

前の夜村越が身体のどこかを噛んだ気がする。気のせいかもしれない。
ただ彼の触れかたはいつもどこか祈りに似ていて苦しい。正直に言えば重い。
タツミが姿を消してから10年、消化したはずで思い出しもしなかった感情が存在が目の前に降って来たとき別物になってしまった、戸惑いと怒りが村越にはあって。
だからタツミはそのことも彼に悪いと感じるところかと思う。

思う必要など無いことをだ。

ヒトに重さを突きつけるとか、どうゆう子供かと考えつつ。
でも自分を見たときそれで何か落とせたのならそれでもイイ。
カレを待っている女の存在が、神様の贈り物のひとつ。




そういえば口調が成功してしていることをタツミは願いつつ、練習後のいつもの2人きりミーティングを終えて戻ろうとする村越に。
「事務所にゴトーいたら呼んでくれる?」
頷いて去った後あまり間を置かずにゴトーが用具室に顔を出したから、タツミは安堵ではふぅと息を吐いた。
「どうした?手が離せないことか」
あごの下辺りで人差し指を立てて口を『しっ』の形にタツミはした。そして左手でこっち来ての動き。
「村越行った?」
来てくれるとか、問い返さずにまずすぐに確認してくれるゴトーをタツミはいつも好きだ。
「脚やばい。ゴトー忙しいだろうけど病院連れてってくんないかな」
「両方か」
「両方」
「立てるか?」
「ゴトーがやってた事は区切りつけれんの?」
そして自分を先にしてくれるゴトーもかなり好きで。
「電話1件かけてくる。急ぎじゃないから」
そっとタツミのヒザに触れて、離れる。
「電話もう1本かけて。先生のとこ。今から診て貰えるか訊いて」


そしてこんなに気を使ったのに、帰っていなかった村越に会えるという幸運。
プリンセスホールド中に。
有里と事務的用件を話し合っていたらしい。




「あっゴトーさん。タツミさん…脚?」
「そうなんだ有里ちゃん。病院連絡したらすぐ診るって言ってもらえたから行って来る」
歩くゴトーを有里は話しながら追う。
GMの監督プリンセスホールドなんてびっくりなシーンにも、タツミなら有りなのかと思わされる型破りな日々に慣れてしまった彼女は説明を求めない。
もう、試合中に眠りかけたタツミの顔を水を張った洗面所のシンクに放り込むのさえクリア出来るほどだ。
村越も話のついでのように一緒について来る。ここで帰るのはもったいないようだ。
自力で立てない時があるタツミを知らなかったし教えてもらえなかったから、の顔もしつつ。
「分かった。気をつけてね」
「悪いな有里。ゴトー連れ出しちゃって」
「それは仕方ないよ。でも心配だなぁ。あ、車のドア開けるね。ゴトーさんキー貸して」
ゴトーが指1本に絡めていたキーホルダーを有里が抜き取って小走りに外へ向かう。
「さんきゅ有里ちゃん」
ずり落ちるタツミを抱きなおしながらのゴトーが重くて大変そうだから、村越は言うことにする。
もうだいぶ前から、有里のようにタツミに向かい合えない。
それもまたコイツのせいだしと、さっさと自分よりゴトーのほうを向くイキモノを見ながら。
「ゴトーさん変わりましょうか?まだ距離あるしクルマ乗せるとき監督のこと一度降ろさなきゃ無い。持ちますよ」
「持つとか荷物か村越」
ずり落ちないように首に掴まるタツミがすぐ反応するから、ゴトーはまた抱えなおす。
「ぁあうん。大丈夫。これでタツミは結構重いから村越の足とか腰とか痛めたら大変だ」
「へえ。重いんですか監督って」
空気が面白いほうへと順調に加速して行っているのは誤解ではないだろう。タツミは顔をしかめたけれど、どの思いにそれをしたのかは自分でも良く分からない。
「39のおっさんなんだよゴトーは」
「なら重いものを持たせるなタツミ」
ゴトーの口調に、所有権提示がある気がタツミにはしてくる。
「それまでもう少しありますからね」
村越には年寄りをいたわる響きが。
「もっと早く歩けゴトー」
「ホントに代わらないで大丈夫ですかゴトーさん」
ゴトーがうんと頷くのに補足。
「早く帰れ村越。有里もありがと」
「言わないほういいかな。お父さ…会長とかに」
「大したことじゃないから言わないでおいて。村越も」
ゴトーの口調は穏やかなまま。
「分かりました」
分かってねぇじゃん帰れっつっただろ村越、とゴトーが後部座席を片付ける間あっさりと抱えあげられながらタツミは騒ぐ。





「それも美味しいと思うけど、もっと満足出来るのを食べに行こう」
「んー。お休みジーノ。明日遅れんなよ」
コイツのことを忘れていた。
「タッツミーは早寝なんだ」
まだ16時を過ぎたくらいだから。
「これから明日もお前らを死ぬ気で走らせるメニュー考える」
「朝まで一緒だったら2人とも遅れないで来られるね」
それでもジーノは、タツミがコンビニで手に入れたスティックタイプのチーズケーキを食べる隣に立ったままだ。
ピッチを吹き抜ける風が秋になってきていて、でもまだ充分暑くて。
タツミはイングランドでこの濡れた重い空気を思い出せなかった日のことを思い出す。
「そぅだな」


隣に居るのを忘れるくらい自然で、話し出してもずっとそうしていたような感触がジーノにあるからやばいと思う。流されそうだ。
でもそれをジーノはおそらく知らない。きっとずっとそれで来ている。
「メシっつっても。ジーノは人目をひくだろうが」
「キレイなものを人は好きだから気にしてない。それに誰も誤解しないよ。気づかれないだろうし」
ぅん。なかなかすごい。
「そうゆうのは俺と何かあってから言え」
「わざわざ言って欲しいの?」
「ジーノは物好きだな」
「可愛い子が好きなだけだよ」
うちの10番は大丈夫なのかなと、顔を上げる。
「女の子みたいにされるのは嫌だよね?最終的にはそうなるけど」
「メシ食ったらお前に喰われんの?」
「今日はその日じゃないけど、たっつみーがどうしてもって言うなら仕方ないかな」
「―――ばか?」
その手を取って、立ち上がる。


作品名:seal / 2 作家名:るか