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「好き」なんて言ってやらない。

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「Hey!会いに来てやったぜ」

そう言って目の前に現れた、憎たらしい性悪猫。
対立していたはずなのだが、宇宙人だか何だかが攻めてきた際に共闘して以来、よくこちらに来る。会いたいと頼んだわけでもないのに、いい迷惑だ。

「何だよ、つれねぇな」

まぁいいけど?とニヤついた顔でこちらを見遣るその姿は、黙っていれば格好いいと褒められるものであるのに。顔を見る度に勿体無いなと思っているが、それを言ってしまえばコイツは調子に乗る。だから、言わないでおく。

『別に、つれないとか無いだろ』
「じゃあ、何でオレが会いに来る度に嫌そうな顔すんだよ?結構傷ついてるんだぜ、これでも」

傷ついているなんてよく言う。
今みたいにニヤニヤしながら近づいてきて、スキンシップだのと言って抱きついてくるくせに。
そして、その行為に本当に傷ついているのは俺であると知らないくせに。

「…オレが誰にでもこんなコトしてるとでも思うの?」
『…違うのか』
「Look at me.
 ちゃんとオレの瞳を見ろよ。ウソついて遊び回ってる男の瞳かどうか」

これだから、コイツは嫌いなんだ。
俺の本心を、いとも簡単に暴こうとする。奥の奥にまで、平気で踏み込んでくる。
俺はまだその覚悟すら出来ていないというのに、お構いなしだ。
―顔が、熱い。

「零、オレはお前が好きだ。いや、好きなんかじゃ足りない。愛してるんだ」
『そんな、こと…』

お前のキモチ、聞かせて。
そう言うが早いか、俺は目の前のコイツに抱きしめられた。表現としては、掻き抱くと言った方がいいのかもしれない。
決して離さないと言わんばかりに、きつくきつく抱きしめられる。それが嫌だと思わないなんて、どうしてしまったんだ。以前までならば、確実に拒んでいたはずなのに。
早鐘を打つ心臓に問いかけるも、答えは返ってくるはずもない。だが、先程までよりも幾分か早まった鼓動が答えを告げていた。
俺は、この男が――ヘルが、好きなのだと。

「Are you okey?顔赤いぜ、零」
『黙ってろ…っ』

確信犯だとでも言うように、またニヤついた顔を見せるヘル。
それに正直に答えてやるのも何か癪に障るから、俺は答えを引き伸ばすことにした。
どちらにせよ、俺はコイツに惹かれているのだということには変わりはないのだけれど。

「素直になれよ、My princess!」
『言えるわけないだろ、「 」なんて!!』



I love youなんて言ってやらない。
(ま、態度で分かるからいーけど?)