Teigr yn bodoli ar ei gyfer
虎徹が伸ばした手は、『ワイルドタイガー』に弾かれた。
ワイルドタイガーの腕の中で、バーナビーは静かに寝息をたてている。
「おまえは、よくない」
「良くない?」
「おまえは、バーナビーにとってよくないものだ」
だから、さわらせないと、ワイルドタイガーは虎徹から隠すようにバーナビーを引き寄せた。
安心しきったように寝息をたて続けるバーナビーに、虎徹は腹をたてた。
つい先日までバーナビーを抱くのは虎徹の腕だったはずだ。
安心したような顔をみせるのも、それは全部虎徹のまえだけでしかなかったのに。
それがどうしてか、バーナビーは偽物のワイルドタイガーの腕の中におさまっている。
挙げ句、良くないってなんだ!!
「良くないってどういう意味だ」
「オレは、いなくなったりしない」
にたり。
と、そうワイルドタイガーは得意気に笑った。
「おまえは、バーナビーをかなしませる。いまじゃなくても、これからさき、きっとだ」
だから、さわらせない。
だから、おまえはよくない。
ぎゅう・と、まるで宝物を抱える温度でワイルドタイガーはバーナビーを抱く腕に力を込める。
爛々と光る瞳は、渡すものかと明確な意志を持ち、犬歯の見え隠れする唇、はおまえにはこの宝物をしあわせに出来ないだろうと歪んだ弧を描いている。
そんな獣の腕の中で、安心しきったように緩んだバーナビーの唇に背筋が冷えた。
『つくりもののワイルドタイガーは、バーナビー・ブルックスJr.のために存在する』