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Shina(科水でした)
Shina(科水でした)
novelistID. 3543
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おきざりにして、いきていく

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多分、僕はおじさんが好きなんだと思う。
ふっと浮かんできた「好き」という感情に、まだ僕にも人間めいたものがあったことに驚いてしまった。

「好き」も「嫌い」もなくて、僕がずっと欲しかったのはただ「真実」それだけだ。

どうして、両親が殺されたのか
どうして、僕は生き残ったのか
どうして、犯人の顔が思い出せないのか

どうして、どうして…


そればかりを追い続けている僕は、どこかで育てるはずの感情を損なってしまった。
そう思っていた。
好きだとか、嫌いだとかそういう感情は、自分とは無縁なものと、そう思っていたのだ。

それなのに、ふとした瞬間に「好きだなぁ」と思うのだ。
おせっかいで空回りばかりの崖っぷちヒーロー。
彼の良いところに出くわすのはまれだ。
そのまれに出くわしたのが悪かったのか、はたまたどんなに拒絶してもずかずがと入ってくる図々しさに絆されたのか。

彼のことを思うと、底の方がむずむずする。
好きなのだと自覚する。
そうして、それはいらない感情だなあと思うのだ。

自分が欲しくて欲しくてたまらないのは、真実ただそれだけだ。
他のものに心を砕く余裕などありはしない。

だから今日の「好き」に蓋をして。
今日の「好き」を置き去りにして、見ない振りで明日に進む。

それでもいつか。
いつか、全てが終わったその時に、拾えたらいい。
そんなことを思いながら、その思いも置き去りにして生きていく。