To Dream1
一回きりだったはずの北斗杯は
今年で早六回目を迎えた。
ヒカルは今年の日韓戦で、やっと因縁の相手
高永夏を半目という僅かな差で倒すことができたが、
それからヒカルは五年前のように、
また心に大きな蟠りを抱えるようになる───。
高永夏が、(ライバルの塔矢アキラとはまた違うが)
絶対に勝ちたい因縁の相手となったのは
第一回北斗杯の時だ。
レセプションでの
『本因坊秀策など、俺の敵じゃない』との発言に、
佐為の碁を誰より近くで見てきたヒカルは
激怒し、敵愾心を燃やすようになる。
それから五年が経ち、
やっと高永夏に勝つことが出来たのにも関わらず
ヒカルはあまり嬉しく感じなかった。
───
まだまだ未熟で佐為には遠く及ばないが
自分の碁の中には確かに佐為がいて、
佐為を馬鹿にした高永夏だけは俺が倒すんだと…
最初はそれだけだった。
でも今思えば、碁を打っている時は
高永夏という強い棋士と打ち合えることが
楽しくて仕方がなくなっていて………。
それは神の一手を求める棋士として
当たり前のことなのかもしれない。
でもヒカルにはそんな自分が許せなかった。
ずっと打ちたがっていたのに、打たせずに
神の一手を極めることのないまま
佐為を消してしまったのは自分。
なのに自分ばかりがこんなに碁を楽しんで
佐為はきっと自分を恨んでいるだろう、と思ったのだ。
終局を迎えた後、横で倉田が
「やったな、進藤!
署名鑑定士として、秀策の敵(かたき)をとれてよぉ!」
と喜ぶも、ヒカルはずっと俯いたまま。
「おい、しんど…」
「敵(かたき)なんか取れてない…
俺が打ったって意味なかったんだ……!」
急に顔を上げたヒカルの目からは
涙が溢れていて、
その苦しそうな顔を見た倉田は、
とっさに会場を走り去るヒカルを止められなかった。
(……佐為! 佐為!
今すぐお前に会いたい…会って謝りたい!)
To Dream2 へと続きます。