じーえいと
ポテりとした小さな姿と、
カラスの濡れ羽根の様な漆黒の髪。
表情のわかりずらい瞳は変わらずだったが、
愛らしさがまし、あどけない視線を送る。
――――――どうしてこうなった!?
事の発端はドイツで開かれた、世界会議にある。
とは言っても先進国だけでするG8会議なのだが…
会議は相変わらずの混乱を生み、
ルートヴィッヒの怒号と、アルフレッドの笑い声、
アーサーとフランシスの喧嘩で騒がしくなっていた。
「っ!!こんのクソ髭!!今日と言う今日はただじゃすまねぇからな!!」
「おっ!!来るか!?お兄さん受けて立つよ~」
「上等だこら!!!」
いつものことながら、若いっていいなぁ…と菊は傍観を決めた。
逆にこれから4日間缶詰になることを考えれば、
今無駄な体力を消費するわけにはいかない。
HAHAHAHAHA、と喧嘩を煽る声に眉を顰める。
「ヴぇ~。菊どうかした??」
テコテコと近寄ってくるフェリシアーノに優しく微笑むと、
苦労している最年少に視線を移した。
「いつもながら、ルートさんは大変だなぁと思いまして」
「だよねぇ~。ルートもよくやるよねぇ」
「大変だと思うなら手伝ってくれないか?」
ほとほと困り果てて菊に振り返る。
「…そうですね。イヴァンさんが」
あえて何も言うまい。
イヴァンが何も言わないだけに恐い。
誰はもはや見えなくなっていた。
「アーサーさん!!」
とりあえず抑えられそうな人物に接触しようと思ったその時だった。
計算外だった。
まさか彼が乱入してくるとは。
いつものようにフランシスをボコッて、
ほぁた☆で止めを刺すつもりだった。
「・・・・・・・き、菊?」
「・・・・・・・」
けほけほっと声はするものの心無しか幼い気がする。
「んま~っ!!!この子ったら何しでかしちゃってるの!?
菊ちゃんっ!!だいじょ・・・・」
「へーいっ!!何ってことしてくれるんだい!?
馬鹿なことするとただじゃっ・・・・」
言いかけ沈黙する。
菊に何かあったんだと察した枢軸組からの殺気を感じる。
「ヴぇ~。にいちゃん?」
ひたりと肩にかかる手はいつものヘタレっぽくない。
「何をしてくれたかな?」
にこりと黒い笑顔を向けるとフランシスは鳥肌がたった。
今ならこのヘタレに敗ける自信がある。
「どうしたんだ!?本田はっ!!」
ルートは慌てて金髪集団をかき分けると、
菊を見つけて絶句した。
「けほけほっ。…あれ?みなしゃんどうかしゃれましたか??」
状況が把握できない。
静かになったはいいけれど、何が起きたのか。
心無しかさ行が言いにくい。
「「「「ちょっ!!!なにこれ可愛すぎるっ!!」」」」
全員が心の中で絶叫した。
「やっべぇ超カワイイ!!お兄さんお持ち帰りしたいわ~」
「ふふっ。僕のものになればいいのに☆」
「今回ばかりはアーサーGJなんだぞっ!!」
「可愛いっ!!ちっちゃい菊だァ!!」
さっきまでの黒さはどこに行ったのか・・
いつものように菊に抱きつく。
「ちょっ!!ふえっフェリシアーノくんっ」
「あー…本田…・」
実はな、とアーサーをさす。
当の本人は鼻を押さえ目をそらした。
「なっ何となくわかりました・・・」
それだけで何となく。
以前目の当たりにした奇跡だと。
「それにしてもこんなちっちゃい菊初めて見るんだぞ☆」
ぷにぷにとほっぺたをつついてみる。
いつも以上に柔らかい。
「しょうでしゅね・・王しゃんくいらじゃ」
「かっわい~!!なんて可愛いのっ!!」
お兄さんだっこしてあげると言わんばかりに、
フェリシアーノからひったくる。
「うわ~ん。兄ちゃんひどいよぉ」
「・・菊・・・その・・ごめん・・な?」
まるで子犬のような目でアーサーがひったくる。
鼻血さえなかったらもっとよかったのに。
「あーしゃーしゃんっ」
きゅんっと胸が高まる。
「だめだっ!!可愛いいっ!!離したくねぇ!!」
ぎゅうっと力いっぱいに抱きしめられる。
「ちょっ!!菊のヒーローは俺なんだぞ!!」
「うっせえ!!誰のおかげだ誰の!!」
「僕も抱っこしたいな・・・」
「誰?」
「マシューだよっ!!」
見に見かねて、ルートがため息をつく。
「…アーサー元には戻らないのか?」
抱き上げたいのを我慢して、ルートはブリタニア天使に訪ねた。
「なんだよ。事故とはいえこんなに可愛いんだから
まだ戻さなくてもいいだろ?」
「あ~・・会議を再開したいんだが」
確かに可愛い。
だがしかし怖いことがある。
ドイツで行われている会議だ。
いつ兄が乱入してもおかしくない会議。
この状態できたら何をしでかすか・・・・
「ふふっ。そんなこと言って抱っこしたいいんでしょ?」
「ちょっ!!イヴァンってめえ!!」
軽々とアーサーから強奪すると、菊を肩車してみせる。
「たかっ!!高いでしゅっイヴァンしゃんっ」
「ふふっ気に入ってくれたら僕の家においでよ」
「ぜんしょしましゅ」
小さくなっても菊は抜かりなかった。
さぁ、と試すようにルートにほほ笑みかける。
自分より高い所にいると視界に入って気になる。
しかも小さいから余計に心配してしまう。
「まっててルート~。今兄ちゃんにも連絡を・・・」
「やめろフェリシアーノ・・・早まるんじゃない」
そんなことをしたら、いらない人数が集まる。
「・・・・何が目的だ・・・」
ごくりと喉が鳴る。
「ん~・・・菊君は今日いっぱいこの姿のまま・・・とか?」
「「「「「賛成」」」」」
「そんな要求は飲めんっ!!」
「ヴぇ~。俺はいいと思うけど」
「フェリシアーノ・・・」
「ん?だって止めるとこはルートの家でしょ??」
「この姿の菊を・・・・兄さんとローデリヒと
エリザベータが見たらどう思う?」
「・・・・あっ・・」
嫌な予感しかしない。
明日菊は会議に出席できないような。
「わたしはもどして・・・」
「・・・わかった。譲歩しよう」
「この会議中だけって言うんだな?」
「むしでしゅか・・・・」
菊は内心師匠に謝った。
一人楽しすギルってこれか・・・
「じゃっ菊は会議終わるまでこのままってことで
決定なんだぞ☆」
「っつーかイヴァン!!そろそろ交代しろよ!!」
「はーいはい!!次俺ね~!!」
「・・・俺が先だ」
こうして、菊にとって長い会議が始まったのでした。
なんだこれw