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暖かいもの

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「お名前、なんというあるか?」

たった一人、大きな海原とどこまでも続く竹林ををただじっと眺めて暮らしていた私にとって
彼の登場は、本当に衝撃だったのだ。
だって、自分よりも大きな「国」を見るのは初めてで、自分以外にそんな
存在があることすらも知らなかった私は、本当に彼が眩しかった。
「まだまだ小さいあるな」
そう笑って、差し出された手のひらは大きくて、そして、暖かった。

大きな手のひらに手をつかまれ、そのまま竹林の中から連れ出される。
ざわざわと風と、私の足で踏まれた草が音を立てていた。
私は、彼に比べてたら背はだいぶ小さかったから、早歩きになりつつも彼についていった。
竹林のさらに上から降り注ぐ光がにところどころに差込み、遠くに見える海原に反射し、キラキラと光っていた。

「お前は、我の弟あるよ」
そうした中で、彼は言ったのだ。
当時の私は、学なんてほとんどのない子供だから、彼の言った「弟」の意味すらわからなかった。
それでも、とても素敵なことを言われたのだと、そう思ったから。
コクンと首を縦に振る。
しかし、そんな不器用な動作でも彼は気にしなかったらしい。
「かわいいあるねー」
そういって、振り返りぐりぐりと私の頭をなんども撫でた。
容赦なく撫でるのは、正直いって少し痛かったので、ちょっとだけ眉間に皺がよる。
そんな様子すら、彼にとっては可愛かったらしく、
「本当にかわいいあるなぁ!」
と、ぎゅっと抱きしめられた。

他人というのは、とても暖かかった。




++++++++++


「日本は、どうしてそんなにスキンシップが嫌いなんだい?」
じゅるじゅると、そこら辺のファーストフードのLサイズジュースを(いや、もしかしたらあのサイズはLLサイズかもしれない。)飲みながらアメリカさんは
不思議そうに聞いてきた。
彼からしてみれば、私の態度はひどく冷たく写るらしい。
色々な国からいわれているから、それは慣れている。どうということもない。
「別に嫌いだかとか、そういうのではないですよ。ただ、そういう民族なんだって思ってください」
「ふーん、同じアジアでも、他はもう少し開放的なのに…」
ジュルジュル。
あなたは、もう少し音を立てずに飲めないのか、教育が悪かったんじゃないですか…イギリスさん。
なんとなくコーヒーが飲みたい気分だったが、どうにもシアトル系コーヒーはちょっと甘すぎて手を出しづらい。
仕方がないので、近くの自動販売機で缶コーヒーブラックのボタンを押した。
ガコンと、なんとも無機質な音を立てて缶が排出される。
「もっと、こう開放的にならないもんなかー、せっかくの世界会議なんだし」
「別にあなたと開放的な関係になるつもりはないですよ」
ふわりと笑って答えてあげれば、アメリカさんはそれはもういい笑顔で
「ま、俺としては、そういう関係もいいと思うんだけどな」
「ご冗談を…」
屈んで、缶コーヒーを取ろうとすると、間違えて暖かいを押してしまったのか、持つのも嫌になるくらいの熱々の缶が転がっていた。
着物の袖を使い缶を取ると、そのまま立ち上がり伸びをする。

「私は、好きでもないものからの体温なんて、いらないんですよ?」
「…え?」


だって、あれ以上に暖かいものなんて私は知らないし、いらない。






「間違えて暖かいのを買ってしまって…アメリカさんは、飲みますか?」
作品名:暖かいもの 作家名:めーこ