APHで海賊パロ7
部屋に置きっぱなしのほとんど開けていない荷物の山を見回す
これを持って行くこれから先の未来を思い少し微笑む
自分が、この自分が海へ出るのだ
ここに来るまでの船旅でさえあんなに楽しかったのに
『海賊』なんて―
海で生き、海を愛する人間
もちろん、それだけでは無いことも知っている
他の海賊船を襲い、人を傷つけ、正義に追われる、闇の人間
たとえ今まで歩んできた光の道を外れようとも
魅力的な闇の誘惑には耐えられないのだ
自分がその一員になれる
船医として
東洋医学は主に薬を使い異常のある部分を治す
あまり場所を選ばず船の上でも十分に機能する
己の能力が他の人の役に立つのが嬉しくてたまらない
自分が東洋からの医学生だと知ったときのアーサーの顔を思い出す
探していたものを見つけ出した時の驚きと喜び
見つけた、そう言われたような気さえする
心にくすぐったいような温かい感情が生まれる
「菊ー用意できたか?」
バッと部屋の扉が開き噂の張本人が入ってきた
「ア、アーサーさんっ!?」
ビクリと体を震わせる
「どうしたんですかその服・・・」
「ん、これか?格好いいだろ!俺のコレクションだ」
まさに海賊といった服装だった
胸元にフリルのついた純白のブラウスに紺色のジーンズ
その上に金と赤いロングコートを羽織っている
頭には豪奢な飾りつきの海賊帽
なぜか顔が熱くなる
思わず女のように頬に手を当てる
「すごい・・・です気合入ってますね」
「だろ?菊なら分かってくれると思ったんだ」
若草色の瞳が煌めく
ドクッと運動したわけでもないのに心臓の音が強く、早くなった
「菊もいい恰好してんじゃん」
「あ、これですか?」
自分の服装を見つめる
胸元にさらしを巻き、茶渋色の着物を羽織ったのみの質素な姿だが・・・
「別に、いつもと変わりませんが・・・?」
「そうか?なんかいつもと違うような気が」
「あぁ、さらしですか?」
「ああ、それだ」
胸元から腹にかけて巻かれた白い布
確かに西の国の者から見れば少し不思議なものに見えたのかもしれない
「これは腹を切られたときに内臓が出ないようにと作られたものでして、私は防護用に使っておりますが」
「なんか・・・グロいな」
死体から中身が出ていては見栄えが悪いので、とつぶやくと更に顔をしかめた
「包帯代わりに使えたりと色々と便利な品です」
これも持っていこう、と思いつく
「私は準備が終わりましたが皆さんは?」
「大体終わったみたいだ、エリザだけはまだ認めてないみたいだがな・・・」
しかし、用意はしているようだと慌てたように言う
こちらを心配させないための気遣いをしているのが筒抜けだ
そういうところが微笑ましいのだが