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【青エク】とどかぬおもい【22話】

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「そうだな、兄さんの言うとおりだ。悪魔は全て排除しよう」


りんの かたにいる おれに かちゃりと くろいじゅうが むけられる。

あれ? なんで?
ゆきお。だって これ ゆきお だよな?

たしかに おれは あくまで。
いまは こんな ちいさなねこだけど。あくま で。

でも ちゃんと ゆきおとも なかよしだった。


ゆきおは おれのだいすきだった しろうと だいすきな りんの かぞくで。
ちがうけど やっぱり にた においがして。
はなせないぶん りんより こわかったけど でも すきだった。

りんが いないとき おれに あまいぱん くれた。
ありがとうっていったけど わからなくて でも よしよしって あたま なでてくれた。
りんがいると しらんかお してたけど いないと のどもおなかも なでてくれた。
おれが きげんいいとき だけど。

だから おれたちは なかよし。


………だったのに。

そう おもってたのに。



「やめろーっ!」

りんの こえ。おおきな こえ。
いっしょに おおきな じゅうの おと。

りんの あおいひ が つかんでる ゆきおの じゅう。

うった? ほんとうに おれを ねらって。

なんで? なかよくしようって いったのに。
「兄さんを よろしくね」って わらったのに。

うそつき。うそつき。うそつき。

りんと ゆきおが けんかしてる こえがする。

うそつき。うそつき。うそつき、うそつき。うそつき!

うそは きらいだ。
にんげんは みんな うそをつく。
でも りんと ゆきおだけは おれに うそをつかなかった のに。



「エクソシストは、殺し屋じゃねーだろっ!?」
「離せって、言ってるんだ!!」
「ぐぁっ!」

ふっとぶ りんの からだ。
なにがおきたのか わからない。
だって りんは つよいんだ。 ゆきおの ちからで あんなふうに なんて おかしい。
じめんに ころがった りん。
うごかない。

うごかない。りんが。

「りんっ! りんに なにをした!!」

りんを まもらなきゃ。
しろうが いなくなって おれにやさしかった りん。
しろうと おなじこといった りん。

ゆきおは すきだけど りんをいじめるのは ゆるさない。
おれのなかの あくまのちが ぐるぐると からだをはしる。



あくまを ぜんぶ ころすって?
それなら りんも ころす?

なら そのまえに おれがゆきおを ころす。

よわい にんげんのからだ。
もとにもどって かみつけば どろにんぎょうのように ちぎれる。
あくまにもどって ひきさけば ただの ちとにくの かたまりになる。

かんたん だ。



ねこのまま みあげれば めがねごしに ゆきおの ひとみ。
こわいかと おもった そのいろは やさしくて。
ぎらぎらしてる とおもった そのひかりは かなしげで。


あれ?
なんで と おもった とき。


(にげろ!)

こえが あたまにひびいてきた。
さからうこと ゆるさない しろうみたいな こえ。
かってに からだが うごいて おれは はしりだしていた。
りんを のこしたまま。

さからえなかった。
おれは おどろいて なきながら もりのなかを はしった。
とおくへ。すこしでも とおくへと。

りんを まもらなきゃと おもってたのに。




あれは ゆきおの こえだったと。
きづいたのは ずいぶん はなれてから。

おれにだけ とどいた ゆきおのこえ。

あくまは ころされるから。
りんのそばは あぶないから?
もしかしたら ゆきおは ばかだから あんなふうに おれを おいはらったのかな?


おれは もりのなかを あるきながら かんがえる。
あくまを ころすといった ゆきおの ことば。


そういえば どうして おれは ゆきおのことばが わかったんだろう。
あんなふうに はなせるのは りんだけ だったのに。




そんなこと おもいついたのは つぎのあさ おひさまが そらに のぼってからだった。