青い鳥について
「うわ、懐かしい……」
そういったのは、久しぶりに自分の家に来ている愛媛だった。
彼女が見つけたのは、本棚に適当に突っ込んでいた本。自分も暫く多忙だったため、急いで片付けた際に出てきた本だった、
『青い鳥』
どおりで、入れ直すときに埃がたくさん手についたはずだ。
小さいとき、山口に駄駄をこねて買ってもらった童話。今となっては、無用の長物となって適当に部屋の何処かに居たというわけか。
「好きなんよね、この話」
汚れなんて気にせずに手を取り、嬉しそうに彼女は本を眺めている。
あらすじは確か、わざわざ旅なんてする必要は無く、自分の家にすでに幸せ――つまり青い鳥が居たという話だったか。
(幸せ、のう……)
確かに探す必要なんて全然無いなと、広島は思う。
だって、自分の前にはこうして青い鳥がいるのだから。
広島はこっそり笑みを浮かべて、後ろから抱きしめた。
――決して、自分の元から逃げないようにと。