早朝のベランダで
「っな……!?」
窓の外には臨也がいた。足を窓枠へかけて器用に張り付いている。異様な光景に帝人は頬を抓るが、残念な事に夢ではなかった。
「臨也さん、朝からなに変な事してるんですか」
「やっと開けてくれた、もー寒くて死ぬかと思ったよ」
「質問に答えてください……」
窓を開けると臨也は我が物顔で上がり込んだ。それはいつもの事なので帝人も諦めて好きなようにさせている。
温かいものを淹れようと帝人は台所へ向かった。臨也はというと、窓をきっちり閉めて靴を玄関に置いてから、帝人の体温が残る布団にダイブした。
「寝に来たんですか?」
お盆に臨也お気に入りの紅茶を乗せて戻ってきた帝人が呆れたように溜め息をつく。帝人の気配と紅茶の香りにつられた臨也は起き上がるとさっそくカップに口をつけた。
「ちゃんと用はあるんだよ」
「そう見えませんけど」
「はい、これ」
帝人の言葉をことごとく無視して差し出したのは、緋色のガラス玉がついたストラップだった。これと同じ色をした綺麗なものを帝人は知っている、それは目の前にあった。
「ね、付けていい?」
「……好きにしてください」
その返事に目を満足げに細めた臨也は、すぐそばに置かれていた帝人の携帯に手を伸ばす。もとから付いていたストラップを外すと適当に放り投げた。
「なんで、急にこんな……」
「プレゼント。俺があげたかったから」
言いながら手際よく付けると、はい、と携帯を帝人に手渡す。受け取った帝人は戸惑いながらも、ありがとうございます、とした言えないでいた。