夕方の床の上で
「特に用はないんですけど……」
「構わないよ。でもちょっと待ってもらうことになる」
「はい、大丈夫です」
そんな会話をしながら中に通される。帝人に紅茶とお菓子を出してから、臨也は資料の山とパソコンに向かった。
いつもなら帝人はそれらに口をつけながらソファーで課題をするのだが、今日は臨也のデスクにもたれるようにフローリングに座り込んだ。体育座りをするように両膝をたてて、渡されたお菓子――今日はチョコレートだった――を頬張る。広いリビングには紙を擦る音とタイプ音、それと帝人がチョコレートを噛む音とが響いていた。
しばらくして、帝人の斜め前に向かい合うかたちで腰を下ろした臨也は、膝をたたいて足を伸ばさせるとそこに自身の頭を乗せた。
「お疲れさまです」
「ん、ありがと」
夕陽を受けるフローリングが食べていたチョコレートのようで、帝人は甘い雰囲気と空間に包まれたような気持ちで臨也の髪を梳き始めた。