それでも好きさ
俺こう見えて家族思いなんだ。なんとなく笑わせてやりたくて笑いながら言ったら、まっすぐに見上げてきて「うん」ってあの子が頷いた。知ってるよって俺のあの子が言った。
「ぼくも家族のこと好きだよ、すごく。黒鷹しかいないけど」
そんなかわいらしい顔見たことないっていうくらい。「だからおんなじだ」ってはにかむのがたまらなくて、そうだねってめいっぱい優しく俺は答えた。
おんなじものが大事だから、そっちのほうが大事なままお互いは選べないかもしれないね、俺たち。切ない気持ちを唇に閉じ込めて、いとおしさだけは本当のまま優しい人みたいに笑ってみた。身も世もなくなってしまうには、良心的に育ちすぎたかなあ俺たち。