ろくでなしに恋をして
俺のあの子の手の中の天秤、その沈む片側にいましますは世界。いい加減、貼りつけた笑みに滲むものを隠せなくなってもくるがそれはいい。あの子は結局のところ彼であるのだから仕方がない。それはいいが。
浮き上がる秤のその片側。そこにはあの子もあの子のあの鳥も、ましてや俺など。何一つとして載らずにそよとも揺れはしないんじゃないかと、そう思ってしまったときの絶望。これをどうすればいい。
「馬鹿だね、あんた」
嘲りと哀れみ。それと少しばかりの同族意識。めったに向けてこないそれらを一緒くたにして、あまり見ない顔でそいつが笑う。
「どれだけ揺れてくれても、結局最後にはあっちを選ばれるのとどっちがましだと思うよ」
ほんと、わらうしかなくなるよ。
それがあんまりにもひび割れた声だったので、弟のようなこの存在もその後に続く自分も、なんだかとてもかわいそうになった。俺たちはひとでなしだけどあっちだってたいしたもんだよね。
作品名:ろくでなしに恋をして 作家名:みりん