あめあめ、ふれふれ(ジローSide)
そう、声をかけた人物は真面目でいつもちゃんと部活に来てて
気難しい顔した俺の後輩。
「芥川さん…今日は無理です。今日は本屋に寄って帰りますから」
『えー…いいじゃん、一緒に行くC!』
「付いて来なくて結構です」
『行く!ぜってー行く!行くって言ったら行く!!』
今日はなんかずっと日吉と一緒にいたい気分だったから、断られたのがショックで
いつもより長めに駄々をこねてみた。あぁ…日吉怒ったかな…なんて不安になっていたら
呆れた顔で付いて行くことを許してくれた。
呆れた顔なのに、どこか優しい表情の日吉に見惚れて、日吉が部活に戻った後もしばらく
その場所から動けなかった。
・・・・
・・・
・・
「『あっ』」
本屋を出てすぐにぽつり。
最悪な状況に二人とも傘を持ってない。
『おわ、最悪だC~!結構降ってきたー…』
「とりあえず、このままじゃずぶ濡れなんで…家来ますか?」
『Eーの?んじゃ、お邪魔しま~すっ!』
日吉の家へ二人で走って帰る。
さっきより降ってきた雨のせいで全身ずぶ濡れなのになんだかワックワクした。
まだ日吉と一緒に居られることが嬉しくて突然の雨に感謝する。
「何変な顔してるんですか」て呆れた顔で聞かれたから思ったことを素直に話したら
隣の恋人は赤らめた顔を逸らした。
何も言わなくてもその反応だけで俺は嬉しくなった。
日吉の家についてからすぐに風呂を借りた。
『一緒に入ろうよー』
「いやです」
『なんで!入ろうよー!!』
「無理です」
『俺…一人寂しいな~…』
「いいから、さっさと入ってきてください」
俺の言葉を聞いてるのか聞かないフリなのか…そのまま風呂の扉を閉めて
出て行った。とりあえず、髪でも洗おうとシャンプーに手を伸ばした。
…ふわぁ…
『…日吉の匂いがする』
髪をゴシゴシと洗うたび、いつも近くで香る匂いがする。
無意識に頬が緩むのがわかった。
(体も頭もアイツと同じ匂いになったC!)
風呂を出てから部屋で日吉を待っている。
大きな伸びをすると自分の体から香る匂いは大好きな日吉の匂い。
早く出てこないかな~とかいっぱい考えてたらいつの間にか寝ていた。
意識が戻り薄らと瞳を開ければ目の前に愛しい人。
…ぎゅう…
「!?…アンタ起きてたんですか?」
自分から香る匂いと愛しい日吉…
体が勝手に動ごいて気が付いたら抱きついていた。
『へへん!今起きた!』
…くんくん…
「何してるんですか…?」
確かめるように日吉の腕の中で日吉の匂いを嗅いだ。
『…へへ、日吉の匂い、俺からもする!』
『なんか日吉に抱きしめてもらってるみたいだC!』
「は?いきなりなんですか、風呂で逆上せました?」
『ち、違うC!!ううー…なんだよー!!』
頬を膨らませて日吉を見つめた。
日吉の顔はお前のほうが逆上せたんじゃないのって言うぐらいに真っ赤で
でも、腕はしっかりと俺の体を抱きしめていた。
俺も抱きしめる力を強めて幸せだなって腕の中で思ったんだ。
『やっぱC、匂いだけじゃなくて温もりも必要みたい』
作品名:あめあめ、ふれふれ(ジローSide) 作家名:ねこだんご@LV18