愛の証
『きのこ~のこのこ~ひよぽんぽん♪』
「さっきからその変な歌止めて頂けないですかね?」
『えー?なんか言った?』
「いえ…何も…」
今は何を言っても無駄のようだ。
この春、俺は大学生になり一人暮らしを始めた。
そして俺の恋人、芥川慈郎は居候。
決して同棲しているわけじゃない。
一応この人も同じ大学に通っている訳だが…授業をさぼる癖は中学の時と変わらず
今の健在しているらしくあの俺様部長に世話を見ろと言われ、今はこんな状態である。
『はーい、出来ましたよーっ!ダーリン』
「その気色悪い呼び方止めて下さい。」
『ひどいC!新婚生活ってそうじゃねーの?』
「誰がアンタと新婚生活始めるって言いましたっけ?」
また勝手なことを当たり前かのように言う相手の頬を思いっきり抓り、涙目になる相手に
優越感を感じていた。
『いひゃい!!もう!乱暴!!』
「知りません。もう学校行く時間なんで行きますよ?」
『ちょ、マジこれ忘れんなって!!』
目の前に出された弁当らしき物。…もしかして。
「さっき作ってたのこれですか?」
『そう!愛妻弁当!んで俺、今日は授業ねーから夕飯も作ってやるよ!』
そう言って満面の笑顔とどこかの赤髪のガム野郎を思わせるピースを見せた。
その時、初めて気付いた。
この人の指に巻かれた無数の絆創膏。
確かにこの人の作る料理は器用とは言えないが…
俺は無意識に芥川さんの手を掴んで、無数の絆創膏にキスをしていた。
…ちゅっ…
『おわぁ…ひ、日吉、何?!』
「…芥川さん」
頬を真っ赤にさせて戸惑いながら、俺を見てくるアンタを抱きしめて
「夕飯…楽しみにしてますね。それと、俺の体でもあるんであんまり傷付けないで下さいね」
『…お、おう!!まかせとけ!!』
今日も良い一日になりそうです。
作品名:愛の証 作家名:ねこだんご@LV18