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ざんげします、すべてのこうかいへむけて

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 僕は時々なんだけど幸次郎を殺しちゃおうかなぁと思う時がある。
それは本当に時々なんだよ、誓って嘘じゃないし、大体こんな嘘誰も得しないね。勿論僕も得しないし幸次郎はもっと得しない。
 この厄介な衝動はいつも突然やってくる。それは幸次郎と他愛ない会話の途中だったり幸次郎が小鳥の置物を可愛いと喜んでいる時だったり幸次郎の小さな口がクッキーをもごもごやっている時だったり幸次郎が僕の隣で静かに微笑んでいる時だったりする。僕はその度に目の前が沸騰した後急激に冷まされたような一瞬のブラックアウトにやられてしまう。そしてお気楽に思う。殺しちゃおうかな。
 僕は一度だけ幸次郎をね、本気で殺しちゃおうと思ってさ、幸次郎の首に手を添えたことがあるんだ。でも駄目だった。どうしても駄目だった。だって幸次郎の首は僕が思ってたよりずっとずっと細くて、少し力を入れただけで簡単に折れちゃいそうだったから。
幸次郎の透き通る白い肌に指が吸い付いて離れなくなるような気がして、なんだかどんどん怖くなって、泣けた。
何に対する恐怖かも解らないまま僕が勝手に泣いていたら、幸次郎は、僕より随分小さな幸次郎は、一生懸命背伸びして僕を抱きしめてくれた。
大丈夫、大丈夫。あやすような口調と背中に回された腕が足りてなくて、それが異常なくらい愛しかった。
何も知らないのに、何でも知っている君。僕はその晩幸次郎が眠っても謝り続けた。
 何故僕は幸次郎を殺しちゃおうだなんて思うんだろう。世間でよく言う独占欲や過剰庇護欲なんだろうか。でも僕的にはどちらもあまりピンとこない。僕は幸次郎に自由でいてほしいし、彼が僕なんかよりよっぽど精神的に強いことを知っている。
じゃあどうして?何度も自問したけれど答えは一向に見つからない。もしかしたら答えなんてはなから無いのかもしれない。
人間が無意味に喰って寝て繁殖するように、僕は無意味に恋した人を殺すのかもしれない。一人になったらうじうじ泣いて過ごす癖に、僕の本能はそういうふうにセットされているのかもしれない。
 このことを打ち明けたら君は何て言うだろう。今まで通り僕と接してくれるだろうか。あの時のように大丈夫と抱き締めてくれるだろうか。
幸次郎、こんなに愚かな僕でも、君は僕を好きでいてくれるだろうか。