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座敷童子の静雄君 2

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「あんな危ねぇボロ家にお前を一人で置いておけるかよ。ここは俺の弟の持ち物だ。今仕事で海外に行ってるからよ、数年は戻らねぇ。だからお前が高校や大学を卒業するまで、綺麗に住んでくれるなら家賃はいらねぇ。水道光熱費だけでいいし、置いてある奴も好きに使ってくれ」
「……でも、そんな……ご迷惑じゃ……」
「ああ? グダグダ抜かすんじゃねーよ、うぜぇ!!」

ついつい凄んじまったら、帝人の目がまん丸になった。
やべぇ。
気まずい雰囲気を何とかしたくて、静雄は大きな手でぺたりと彼女の広いオデコに押し当てた。

「……熱い、お前さ、熱あんじゃねー?……」
「あ、昨日ちょっと風邪気だったみたいで」
「そっか、じゃ寝てろ」
「ふぎゃあ!!」

幽のベッドにころりと転がし、頭から布団を被せてみるが、エアコン完備の部屋だけあって、ここのも妙に薄地の掛け布団だった。
彼女は電気代を大いに気にするだろうから、勝手につけられないのが辛い。

「アパートの荷物は心配するな。俺が今から運んどいてやる」
この時間帯なら、門田達のグループが池袋を徘徊し始める頃だ。
帝人の家の荷物は極僅かだし、露西亜寿司で食事を一回奢ってやれば、バンでの荷運びだって引き受けてくれるだろう。

「後、何か食いたいモンとかあるか? 俺、簡単な料理ぐらいなら作ってやれるし……、寒くなったから鍋焼きうどんなんてどうだ? うどんなら消化いいし、体も暖まるしよ♪……あ、材料……あるのかここ?……」
幽は大概何でもできる男だったけど、炊事だけは全くやらなかった。

試しに台所をひょいっと覗いて見れば、使われた形跡が全く無いシステムキッチンが埃を被っている。
炊飯器どころか、皿すら一枚もない。
冷蔵の中も、綺麗に空だった。
静雄は諦めて携帯を鳴らした。
買い物がてら、帝人の家からとっとと荷物を運んだ方が早そうだ。

「あの静雄さん、どうしてこんなに親切にしてくれるんですか?」
「ガキの頃、ばばぁに守護を頼まれたって縁があるだろ。ああそうだ、不動産会社も解約時はついてってやる。お前みたいな田舎者、一人じゃ敷金の返却交渉、軽々騙されそうだからな」
「でも、でも」
「うぜぇ。病人は黙って寝てろ」
「ふがっ」

這い出てきた彼女をもう一度ベッドに押し込み、赤く染まった頬をサングラスで隠しつつ、逃げるように部屋を出た。
笑いたくば笑え。
チビの時とは違い、大きい静雄は帝人とまともに目も合わせられないぐらい、純な照れ屋だった。



作品名:座敷童子の静雄君 2 作家名:みかる