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座敷童子の静雄君 2

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静雄は無事、恋する少女の下へと飛んだ

★☆★☆★

「静雄くん、中が熱々だから、舌を火傷しないように気をつけてくださいね?」
「……はふはふ……、う……」

帝人の膝にちんまり座り、二人してコタツに足を突っ込み、蒸したて手作り肉まんをぱくつきながらこくこくと頷く。
卵入り鶏がらスープと、フルーツ缶詰がたっぷり入った杏仁豆腐もあり、チビの胃袋じゃすぐ腹一杯になっちまうのが難だが、今の帝人は苦学生。
経済的な負担も、これならたかが知れてる筈。
(あー、俺、今なんて幸せなんだろ)
こんなに気兼ね無く、べったり女の子に甘えられたのなんて、……多分、幼稚園時代以来だ。

「お口に合いますか?」
「……うん、うま♪……」
「そう♪ 良かった♪」
帝人もにこにこっと綻んだ。

「なら、きっと静雄さんの味覚にも合いますね♪ 明日、喜んでくれると嬉しいなぁ♪」
あぐっと噛み付いた熱い塊を、飲み込まなかった自分を褒めてやりたい。
(それは……、もしかして大人の俺にも、差し入れしてくれるって事?)
口の中をもぐもぐと一生懸命片付けて、じぃっと彼女を見上げてみる。

「……みかろは、大き…くなった俺……、好き?……」
彼女は不思議そうにこっくり小首を傾げた。
でも、自分の中で合点がいったのか、満面の笑みを浮かべ、静雄を抱きしめ、彼のほっぺたに頬擦りまでしてくれて。

「焼きもち焼かなくたって大丈夫ですよ♪ 私は小さい静雄くんが一番好きです♪ 何てったって私の守り神ですもの♪」
(違ぇよ!!)
鈍感娘め。
気を取り直し、別の方向から攻めてみる。

「……大きい俺、かっこいい?……」
「とっても♪ 将来静雄くんはね、なんと……池袋で最強と噂される、もの凄い人になるんですよ♪」
「じゃ、みかろ……も、そいつ好き?」
「ええ♪ 大好きですよ♪」

「じゃあ……、じゃあ……!!」
ごくりと息を飲む。もしかして、チャンス到来?
(行け!! 今だ俺!! 勇気を振り絞れ!!)

「……、みかろ、大きく……なった俺……と、結婚……して……!!」
「はいはい♪」
「やくそ…く!!」
小指を突き出すと、にこにこと絡めて指きりし、頭も撫でてくれて。


(よっしゃああああああああ、言質取ったぁぁぁぁ!! 気づいてねぇぞこいつ!!)
心の中でしかガッツポーズを決められない、小心者を笑いたくば笑え!!
これが、ヘタレな静雄にとっての精一杯。

翌日「指輪を買いに付き合ってください♪」と言われたトムが理由を知った時、あまりの情けなさに涙を零したのは内緒である。


だが肉まんとあんまん、それから杏仁豆腐を食べ終わると、帝人が早々に手鏡を取り出して。
「…え?…」
帰すつもりだと知り、ふるふると首を横に振りまくる。
時間はまだ9時だし、風呂にだって一緒に入ってねぇ。

「……みかろと寝る……!!」
「だって静雄くん、ご両親が心配するでしょ?昔は、静雄くんが亡くなってる霊だと思ったから、延々引き止めちゃったけれど……」

「……いねぇ!!……」
「え?」
「家、俺一人!!」
「ええっ!?」
「だか…ら、平気!!」

ふんっと鼻息も荒く言い切ったら、帝人の広いおでこから丸見えの、眉毛が八の字に下がった。

作品名:座敷童子の静雄君 2 作家名:みかる