粘膜感染
まあ、一年限りとはいえほとんど初対面に近いような叔父の家に世話になって、しかもそれだけではなくテレビの中の世界に入って、そこでシャドウを倒す生活だ。
さすがに俺でなくとも風邪くらいは引くだろうと納得して、今日は大人しく学校を休むことにした。
菜々子は「お兄ちゃん、大丈夫?」と少し不安げに学校へと行った。「早く帰ってくるからね」と何度も俺のほうを振り返りながらのその姿は実に可愛い。そして菜々子を送りだしてすぐに俺は横になった。そのまますぐに意識はフェードアウト。
そして、今ふっと目が覚めた。
目を開けた途端に飛び込んでいたのは陽介の顔。心配そうに俺を覗き込んでいるところだった。
「あー、今何時?」
なんで居るんだ、などとは特に聞く必要はない。どうせ俺が学校を休んだのを心配して来たのだろう。
「あ、ああっと、5時……は、回ってる。えっと菜々子ちゃん、今クマと一緒にレトルトだけどおかゆとか買いに行ってる。オレはその間の留守番な?」
「そっか、すごい寝てた……」
喉がからからに乾いていた。だから起き上がって枕元のペットボトルに手を伸ばしてみた。きっとこれは菜々子が置いてくれたのかそれか陽介が持って来たものだろう。
「水……」
「ああ、飲んだ方がいいよな。お前すっげ汗かいてっぞ。飲んだら着替えろよな」
「ああ……」
陽介は俺の身体を支えて起き上がる手助けをしてくれて、尚且つペットボトルのキャップも外して、それを俺に手渡してくれた。口を開けばがっかり王子、などと言われているが、陽介は基本的にきちんと気を使えるヤツである。面倒見もかなりいい。
「お前でも風邪とか引くのな」
「陽介はしょっちゅう引きそうだけど?」
「んー。そんなことねえよ?オレが倒れたらジュネスのバイトとかさ、たいへんじゃん?」
地方都市型大型デパートのジュネスの息子。そんな立場から、陽介はジュネスのバイトを束ねるリーダー的なことをしているのだ。バイトやパート達の文句や不満など一々きちんと聞いて対応している。えらいなと、言葉には出さないけど俺は思う。
「お前も苦労してるな……」
「まーね。別に慣れたけど」
……なら、陽介を倒れさせるわけにはいかないな。とすれば俺が下か……。
少しだけ考えながら、水を飲み、そして肩をこきこきと回す。
熱は、下がったようだ。身体はそれなりに軽くなってる。
「あーっと、勝手にタンスとか開けて平気か?着替え取るけど」
「ああ……頼む。だけどその前に、陽介」
「んー、何?」
「……風邪が粘膜感染でうつるというのが本当か都市伝説かどうか試してもいいか?」
「へ……?ねんまく?」
「そう、粘膜感染」
ひょいと、俺の汗まみれの布団に陽介を押し倒し。そして手早く服を剥ぐ。陽介が呆けているうちにさっさとそこを扱きあげて、そして。
「ちょ、ちょっと待て相棒っ!お前熱で脳ミソやられてんじゃねーだろうなっ!」
あたふたし出した時にはすでにはち切れんばかりになっていた陽介のそれを俺の中へと入れてみた。
風邪が移るのなら、たまには陽介にも休みを取らせてやれるだろうし。
俺が看病してもいいし。
「せめてもの情けに、俺のほうに突っ込ませてやってるんだから、陽介はそのまま気持ち良くなっていればいい」
「ちょ、ちょっと待ってくださいいいいいいい」
「待ってもいいけど、陽介のほうが待てないだろ?」
ゆらりと腰を動かせば、それだけで陽介のそこはものの見事に反応する。
躊躇する気持ちよりも体の本能に忠実。
「それとも、俺に突っ込むほうじゃなくて、俺が陽介に突っ込んだ方がいいか?」
風邪ならともかく、俺のこれを受け入れた挙句、立ち上がれなくなっても困るし、あまりに遅くなって菜々子が帰ってくるのもマズイ。
とりあえず、腰をこれでもかと動かして、二人して本能のままに吐き出して。
それで後は、結論を待つ。
結果は俺だけが知っていればいい。
終わり