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きみはぼくが

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 昼休み、今日は屋上にて、僕は静雄と臨也と一緒に昼食を食べる。
 今日はセルティが暇だったからといってわざわざ弁当を作ってくれた。もちろん僕は歓天喜地、欣喜雀躍、有頂天外、ああもうこの喜びはどんなに言葉を尽くしても足りないよ!
 僕は喜びを噛み締めながら、まさにこの表現は的然適切だと思うんだけどね、セルティの愛妻弁当を有り難くいただく。もう隣の二人なんてどうでもいいかもしれない。いや、どうでもいい。
 僕の中でセルティの使ったタオルの次の次くらいの位置にいる友人達(仮)は、思考が通常運転の僕だったとしても本気でどうでもいい話題について語り始めていた。

「俺が思うに、シズちゃんが残念なかんじなのは俺への愛が足りないからだと思うんだよ!」
「ふざけんなきめぇ俺は手前なんざ大ッッ嫌いだ」

 ここで僕は君達に実に残念なお知らせをしなくてはならない。
 僕のほぼ唯一といってもいい友人達、平和島静雄と折原臨也(もちろん両方ともまごうことなき男子だ)は数週間前からオツキアイというものをしている。
 まあ別に僕はそこら辺の問題に偏見を持っている訳ではないから、構わないといえば構わないけれども。いやぁ、まさか本当にこんなことに巻き込まれる日が来るなんてねぇ。あはははは。

「あはは君達青春してるねぇ」

 特に気もなく笑えば、静雄が眉間にしわを刻んで、心底わからないといった顔をして呟いた。

「つーかよ、なんで俺はノミ蟲なんかと付き合ってるんだ?全く理解できねぇんだが」

 一瞬まばたきをして、一番正確な答えを探した。

「え、そりゃあ…臨也が静雄のことを好きだからでしょ?」
「違うよ、俺がシズちゃんに、シズちゃんが俺に恋してるからだよ」
「あれぇそうだったっけ。なら僕の脳に残ってる臨也がいろいろ仕込んでたような記憶はなんだろうね?」
「あはは、記憶違いじゃない?ついに耄碌してきたのかな、新羅クンは?」

 僕は爽やかに笑ってやったのに、臨也のやつ、笑顔だけどこれ以上余計なこと喋ったら刺すぞみたいな目をしている。笑顔で脅すのやめてほしい。本気で。
 不毛な心理戦を交わしていると、ずっと大人しく考え込んでいた静雄が、ぽつりと口を開いた。

「…恋ってよぉ、もっとこう…甘酸っぱいモンじゃねぇのか?こう…相手のことを考えるとこの辺りがぎゅってなったり、一緒にいるだけで嬉しかったり…」

 この辺り、と言うところで、静雄は自分のシャツの胸の辺りを掴んだ。
 !!!!!

「どどどどうしよう!!静雄が!!夢見る乙女に!!」
「あははははははは!!やっぱ最高だよシズちゃん!すごいや!」

 いろいろと衝撃的すぎて、僕の思考回路が激しく火花を散らした。ていうか臨也うるさい!静かにしろ、集中できないだろ!
 ていうか本当にどうしよう!静雄がこんな純情可憐な男子高校生だったなんて予想外にも程がある!えっ、嘘だよね、嘘だと言ってくれ、静雄!でも静雄はそもそも嘘ついたりしないし例え嘘をついたところでド下手だからすぐわかるし…………じゃあやっぱりほんとなの?!

「うわあああ僕はどうしたらいいんだ!?静雄に正しい道を示す?!それとももうこの純粋さを残して純粋培養させる?!ああでもそれは無理かなだって臨也がいるもん!やっぱり臨也が静雄を汚れた道に引きずり込む前に僕が静雄に多様な恋愛観を教えてやらないと!!」
「ちょっと…失礼なこと大声で叫ばないでくれる?」

 臨也が眉を寄せて彼独特の笑ってない笑みを浮かべる。

「いや、だっていろんなことの初めてが臨也なんて流石に静雄が可哀相だよ!」
「ラッキーの間違いでしょ?一生一人の相手なんてなかなかない純愛じゃんか」

 うん、やっぱり静雄の教育を臨也に任せるのはよくない。滅多に見られない臨也の最上級の笑顔に、僕の直感がそう告げた。





きみはぼくが守るから!

作品名:きみはぼくが 作家名:暮葉弥