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無未河 大智/TTjr
無未河 大智/TTjr
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とある夢幻の複写能力<オールマイティ>

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序章 異動と再会



俺、天岡叶(あめおかかない)は少し困っている
今目の前にそびえるのは第七学区風紀委員第一七七支部
転勤、と言えばいいのか、俺は学校の都合でここに異動になった
もともとは第一七六支部にいたはず
しかしなぜか異動を命じられここにいる
まあ、学校からだいぶ近くなったと考えればめっけものか
今日は七月十七日
今日から配属になるのだから、挨拶ぐらいはしないと…ね



そして少年はドアの前に立つ
認証システムを軽くすり抜けドアを開ける
「こんにちわーっす」
そこにいたのはピンク色の髪をツインテールにまとめた少女と…
…巨乳の、叶と同い年そうな女性がいた
「あら?あなたは?」
ツインテールの少女がこちらに顔を向け訊く
いくらか書類を持っているため、それの片付けの途中であろう
「あ、今日からここに配属になった天岡叶です」
「あら、貴方が天岡君ね。私は固法美偉、よろしく」
巨乳の女性はそう名乗った
「わたくしは、白井黒子ですの。よろしくですの」
ツインテールの少女も同じように名乗る
ふむ、この容姿からして常盤台の子か
「…?白井…どっかで聞いた気が…あっ」
叶はにわかに思い出す
「ああ、そうか。風紀委員には捕まったら身も心も切り刻んで再起不能にする最悪の空間移動能力者の白井がここにいると聞いたが…」
そしてギギギとでも音の出そうな感じで叶は黒子を見る
「君の事か…」
「失礼ですわね。わたくしは…」
「はいはい、じゃ、白井さん、見回りお願いね」
「はいですの」
黒子は支部を出る
"その場から消えるようにして"
「流石は空間移動能力者」
「さて、貴方には仕事があるわよ?あ、あなた高校1年よね。私も同じだから、タメ口でいいわよ」
「ああ、はい。で、仕事とは?」
「この、引継ぎの書類をね」
叶の目の前に書類が出てきた
文字通りの山のような書類が…



「…まさかね、こんな書類を書かされるとは思いもしないわけですよ」
「ま、しょうがないわね。はい、コーヒー飲む?」
「あ、はい」
叶は美偉からコーヒーのカップを受け取る
そのとき、かすかだが美偉の指に叶の指が触れる
「…!?」
美偉は何かを感じた
しかし言葉に形容できない
「どうかした?」
「ああ、いや。…そういえば、あなたの能力は?」
「…高速演算(スピードカリキュレータ)ですが」
叶は少し間を空けて答えた
「ああ、あの珍しい能力ね」
「ただ早く演算ができるってだけだけどね。…あなたは?」
「私は透視能力よ。まあ、役に立つけど簡単に人の持ち物を透視するようなことはしないけどね」
「それが普通ですよ」
「さて、時間ね。今日はお疲れ様」
「…て、書類書いただけですけどね」
「まあ、いいじゃない。施錠するわ」
「はい」
そして二人は支部を出る
黒子はこのまま直帰するらしい
「では、お疲れ様です」
二人は別々の道を歩いて帰った
―まあ、今日は透視能力を複写(コピー)できたし、いいか



叶が帰る道中
近くのコンビニでアラームが鳴っているのが聞こえた
「…これは…ATM?」
そのコンビニを見ると走りながら男と女が出てきた
「不幸だあああああああああああああああああああああああああ!!」
「ちょっと、どこ行くのよ!!」
―…御坂と上条か…
 あいつは何をやってる…
そして叶は風紀委員として二人を追うこととした



どれくらいの時間走っていただろうか
もうすっかりあたりは暗くなり、星が輝いている
―…仕事してたって言ったら大丈夫だよな…
叶はこの後のことを考える
叶は常盤台で教師をしている母親と暮らしている
父親はいま色々と忙しいらしい
「…あいつら…」
それよりも心配すべきは今目の前で起こっていること
「いいぜ、いつでもかかってきな」
「言われなくっともこっちはずっとこのときを…」
美琴と当麻はいまにも決闘をしようとしていた
―飽きないなぁ…
 まあ、今回も上条の勝ち…いや引き分けか
そう思いながら叶は、この決闘を見守ることにする
まずくなって来たら手を出すつもりでいるが…
「待っていたんだから!!」
刹那、美琴は当麻に向かって電撃を放った
それを上条は右手で受け止める
…否、右手で打ち消す
―いつ見ても不思議だ…
 なんなんだ?あの右手は…
そして美琴は地面から黒い何かを電気を使って取り出す
砂鉄だ
それを刃物状にして当麻に襲い掛かる
ただの剣じゃない
蛇みたいに動き回る剣でだ
「やはり、あの右手は不思議だ」
当麻の右手に向かって刃物は動く
しかし触れた途端に砂鉄に戻る
美琴はあきらめることなく風に乗った砂鉄でなおも攻撃を仕掛ける
それを器用に当麻は右手で砂鉄に戻していく
しかし
その隙を利用して美琴は当麻の死角から迫っていた
「いっ!」
当麻の右手が美琴につかまれた
多分直接電流を流すつもりだろう
しかし
電流が流れないらしい
「…さて、これ以上は危ないかな」
叶はそこから消えた



―電流が…流れない!?
美琴は困惑していた
「はーい、そこまで」
美琴と当麻はとっさに声のほうを向く
「あ、アンタ…」
「天岡…叶?」
「おう。久しぶりだな、上条、御坂」
叶はよっ、と右手を上げる
「さて、ここは風紀委員として拘束しなきゃなんだけど…」
叶は頭を掻きながら二人に近寄る
「個人的判断でなかったことにしよう」
「いつもすみませんねぇ天岡」
「…チッ」
「舌打ちなんかしてると可愛くないですよ?常盤台のお嬢様」
「うっさい!!」
美琴は叶に向けて電撃を放った
叶は微動だにしない
「だーから効かないって言ってんだろ?」
その電撃は叶に触れる前に叶をそれていく
「俺は一度お前に触れている。超電磁砲は複写済みだ」
「…反則よ…それ」
「それは、『八人目(アンノウン)』に言うせりふかな」
「…それもそうよね…じゃ、門限切ってるし、帰るわ」
そして美琴は去っていった
たぶん叶が仲裁に入らなければ当麻を追い回していただろう
「すまねぇな、天岡」
「いいって。…それより、内緒にしてくれてんだろうな」
「ああ。上条さんは約束は守る男ですよ」
「ならいいんだ。…絶対誰にも言うなよ…」
そして叶は声を低くして言う
「俺が、八人目の、複写能力だって事は…」



「ただいまー」
叶は家に着いた
「今日も仕事?」
家には必ず女性がいる
叶が帰宅する前には大体いる
「母さん、今日仕事は?」
「警備員の仕事はなし。授業もいたって普通」
「そっか」
「あんたは?」
「こっちも普通。帰り際に痴話喧嘩見つけて仲裁に…」
祐樹はフフッと笑い、息子に問う
「それっていつもの?」
「ああ。上条と御坂だ」
「あの二人も飽きないわねぇ」
「飽きてくれないと心配だけどな」
「ささ、ご飯できたし、早く食べて風呂入って寝なさい。明日も早いんでしょ?」
「ああ。授業日なのに呼び出しだよ…ったく」
祐樹はフフッと笑い叶に言う
「それが風紀委員の定めね」
「…まあ、起きてることが起きてることだしね。…聞いてるんでしょ?母さんも」
母親は真剣な面持ちで目の前の息子に言う
「ええ。…あの虚空爆破事件…。何かおかしいわ」