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新宮紗弥香
新宮紗弥香
novelistID. 31525
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君の/知ら/ない/物語

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いつも通りのある日、君は突然立ち上がって言った。

「今夜、星を見に行こう!」

天文学部、初めての校外活動。
部員10名の中で、集まったのはたったの4人。
「たまにはいい事言うんだねー」
なんて、みんなして言って笑った。
明かりもない山道を、バカみたいにはしゃいで歩いた。

抱え込んだ孤独や不安に、押し潰されないように……。

私たち、たった4人だけの真っ暗な世界。
そこから見上げた夜空は、星が降るようで。

いつからだろう。
気がつけば、いつも君の事を目で追いかけていた。
今だって、そう。
必ず君を視界の中に入れる、私がいた。

この気持ちを君に伝えるのなら、お願い。
どうか、驚かないで聞いていてね?
私の、この想いを……。

「あれがデネブ。で、あれがアルタイル。その下で光ってるあれは、ベガ。」
君が指差す夏の大三角を覚えて、空を見上げた。

やっと見つけた、織姫様。
だけど、彦星様はどこだろう?
これじゃあ、独りぼっちだよ……。

楽しそうな、一つ隣の君。
私は、何も言えなかった。

本当は、ずっと君の事を……。
どこかで、分かっていた。
でも見つかったって、届きはしないの。

『だめ、泣かないで。』

そう、言い聞かせた。

「なぁ、楠木(くすのき)。」
「ん?何?」
夕暮れに染まる校舎。誰も来なかった、二人きりの部室。
「あれ、見てみ。」
天井を指差す君。そこに貼られた、星座表。
「織姫と彦星ってさぁ、天の川に邪魔されて、全然一緒に居れないよな。」
「うん、そうだね。」
「でもさぁ、地球から見たら、二人は一緒に、‘夏の大三角’を作ってんだよなぁ。」
「……言われてみれば、確かにそうかも。」
「それってさ、すごくないか?ちょっとクサいけどさ、‘離れていても、心は一つ’みたいな事だと思うんだよ。」
「あ……、そう言う事になるのかな……。」
「俺もよく、分かんないけどな。」
暫く、不思議な沈黙が続く。
「……あーっ!もうっ!クサい、クサいよ!一之宮っ!」

強がる私は、臆病で。

「~っ!だから、クサいこと言うって言ったろ!?」
「なんかさぁ、もう何かそれ、すごい遠距離恋愛!」
「しゃ、しゃーねぇだろ!そう思ったんだから!」
「そうやってすぐ惚気るんだからぁ、もう。」

興味がないようなフリをしてた。

「う、うるせぇっ!仕方ないだろ!」

だけど。

「やっぱりどうしても、なかなか会う機会がないんだから…」
君の頬は、夕日よりも紅く染まっていく。
「一之宮ぁ、顔、真っ赤だよ?」

胸を刺す痛みは増していく。

「ほっ、ほっとけ!」

あぁ、そうか。

「にゃははー、彼女が見たらどう思うかなー?」
「~っ!、あーっ!終わり終わり!もう終わりっ!」


‘好きになる’って、こういう事なんだ……。



「……き、く…の…?楠木っ!」
「…!あっ、ごめん、何?」
いつの間にか、君は私の隣にいる。そして、君のさらに隣には、‘あの娘’。
「いや、ぼーっとしてるから、大丈夫かなって思ったんだけど…。」
「え、あ、いやいや、ちょっと考え事してて!ごめんね、心配掛けたみたいで…。」
「いやいや、大丈夫ならいいんだ。」

ねぇ、どうしてそんなに優しくするの?

「それよりー、せっかくの再会なんだから、私なんか構ってないで、優ちゃんとラブラブしなさいよ!」

分かってるけど、止めて。

期待してしまうから。お願い……。

「なっ!んでそうなるんだよ!」
「私が見たいから!」
「意味わかんねぇし!」


――ねぇ、あなたはどうしたいの?――

心の声がした。

ホントは、あの娘と居る君は見たくなんかない。
君の隣にいたい、君に触れていたいの……!

でも。

‘真実’は‘残酷’だ。

隣にはいれない、触れることなんて叶わない。




言わなかった。ううん、言えなかったの。

そして、二度と‘戻れない’。

あの夏の日、煌めく星。
今でも、思い出す事が出来るよ。

笑った顔も、怒った顔も……。
ずっと、ずっと、大好きでした。
おかしいよね。
分かっていたのに……。

これは、君の知ることのない、私だけの‘秘密’。

夜を超えて、時を超えて。
遠い、遠い思い出の君が、指をさす。


無邪気な声で。
作品名:君の/知ら/ない/物語 作家名:新宮紗弥香