煙を燻らす男達
突然、ドン、という銃撃音と悲鳴が聞こえてきて、メガトロンは顔をしかめた。
「まったく、あの役立たずどもが……」
せっかく次の計画のアウトラインがイメージ出来てきたところなのに、気分を害すること甚だしい。わざわざ更に気を悪くすることもあるまい、と、考えて、音は無視することにする。
デスクの上に乗っている、葉巻入れのフタを開けると、葉巻を一本取り出す。と、同時に、ストックがもう少ないことに気がついた。
「ナビ子ちゃ~~ん?」
メガトロンが空中に向かって声をかけると、誰も居ないのに、可愛い女の子の声が返事をした。
「はいはーい、何か用?メガちゃん」
「葉巻注文しといてくんないかなー? いつものヤツ」
「おっけー。すぐ届くわよ、メガちゃん♡」
「ありがと、ナビ子ちゃん♡ ついでに、お風呂も入れといて?」
「りょうかーい。10分後には、いいお湯になってるわ」
「う~ん、素晴らしいね~」
ナビ子ちゃんは、このアジト全体のコンピューターを司る人格付与型の汎用AIである。メガトロンは、生身の部下よりもよっぽどナビ子ちゃんを信頼していて、情報収集からセキュリティ、アジトの管理まで、全てを彼女に任せている。
メガトロンは彼女の返事に満足すると、丁寧に葉巻に火を付けて、ゆっくり燻らせ始めた。
メガトロンは、作戦実行中等ではない普段の日は、こうやって一日の最後に葉巻を吸い、熱い風呂に浸かるのが、日課である。