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笑いあう

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最も理解出来ないのは自分に愛だけを囁き続ける男だった。
どんなにボロボロになるまで傷ついても決して自分を放そうとしない男。
弟へ近づく為に関心を示してくる他の奴らとは違う、温かい掌。
理解出来ない。
何度疑って突き放して酷く扱っても笑って抱きしめて、
「照れ屋さんやなあ」
と一言だけ。

温かい腕の中は心地よくて安心してしまう。
居場所は此処なんだという安心感。
好き、という言葉になって口から零れることはないのだけれど。
きっと愛してるとはこういう感情なんだと思わされる。
だから今日も隣にいて二人で笑うのだ。
もしも自分がこれだけ愛してることが相手の幸せになるのなら、いくらだって思うことができる。
口に出すのは恥ずかしくて、相手の気持ちがどうしても理解できなくて不安で。
口にしてしまえばいつか相手に重くのしかかってしまうのが怖くて。
好きだと言い続けるのが自分だけになってしまったらなんて考えたら、泣き出してしまいそうだ。
だから今日も口には出せずにそっと手を伸ばす。
ギュウと抱きしめて、スペインは笑う。
「どしたんロマ?」
「なんでもねーよ、こんちくしょうが!」
「可愛ええな、大好きやで」
理解できないはずの愛の言葉なのに心が満たされる。
そして初めて笑えるのだ。

end

作品名:笑いあう 作家名:ツタガワ