あなただから
見た目が怖いってわけじゃないんだけど、なんて言うか…ちょっと怪しい人な気もしたし
だけど色々気を使ってくれたり、色んな事を知ってたり、戦い方を教えてくれたりして
ちょっとワルそうな所もなんだかカッコいいなって思ったんだ。
だけど、僕が見た目通りだけの人間じゃないように
彼にも色々沢山の物があった。
優しいのもホントだけど
嘘つきなのもホント
僕たちが信じてるのを知ってて裏切ったりするし
かと思えば助けてくれる……。
信じていいのか分からなくなることもあった。
だけどそんな時に限って僕を助けてくれたりして、僕をかばって怪我をすることさえあった。
挙句の果てには、レイアを撃って。
あの事を僕には責める資格なんてないけど、幼馴染を撃たれたんだから嫌いになるには充分な理由の筈だった。
だけど気付いたら
優しくて嘘つきで
裏切って助けてくれて
信じてくれて信じさせてくれない
そんな矛盾だらけの彼を、好きになっていた。
あの旅でそれぞれ失ったり、得たりした物をみんな持っている。
それは個人だけの物で、代わってあげたり、分けあったりすることはできない物ばかりだ。
「俺だって、ミラの代わりになれるなんて思っちゃいねーよ。それならまだガイアスの方がお前にとって理想に近いだろうからな。でも、な…それでも、お前を支えられるのが俺なら良いのにって思っちまったんだよ」
アルヴィンの言葉に僕はようやく我に返った。
イル・ファンに来たアルヴィンと久しぶりに会って、ハイファンホテルで食事をしていたところだった。
それでどういう話の流れか、アルヴィンが僕を好きだと言った。
途中何を言っていたのか、僕は自分の考えに没頭してしまっていてよく聞いていなかったけど…最初と、最後の言葉さえ聞けたら
僕にとってはそれで -アルヴィンには申し訳ないけど- 充分だった。
僕は言わないつもりだった。
目の前でプレザを失った、助けられなかった事を思うとまるでその隙間に付け込むようだと思ってしまったから。
けれど、アルヴィンがそれを言うのなら僕も言ってしまおうと思う。
「代わりになんて、誰もなれないよ」
応えると、旅の途中時々見せていた堪えるような表情を浮かべた。
泣き笑いのような、全部隠してしまうようなそんな。
続きを言ったらどんな表情をするんだろう、と思いながらゆっくり唇を震わせた。
「あのね、僕は」