二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

かがやくきみ

INDEX|1ページ/1ページ|

 



背中がすこし湿った土の温度を感じる。押し倒されたのだ、と気づいたときには俺は草原のなかにそっくり埋もれてしまっていて、ただその草々のむせかえるようなあおいにおいに飲み込まれるようにしてヤツを見上げていた。まわりにはたくさんの彼岸花が咲いていて、精一杯背伸びをして、まるであの空に刺さろうとするかのようだった。だが俺には赤い花たちが群れをなして目指すその空さえ目の前のヤツに邪魔をされて見えない始末だ。俺は、秋の空に輝く星がみたいのに。
「忍足」
「なん」
「星が」
「星が、どうかした」
「星が、みえない」
だからどけ。そう言いたかったのだがそれは慣れた男のくちびるにふさがれて言葉にはならなかった。この男は俺の邪魔をするのが本当に得意だ。いつもいつも。
今だって、俺は、本当はこんなところで寄り道をして、こんなことをしている場合じゃあないのに。家に帰ればじいやが俺の誕生を祝う盛大なパーティの用意をしているはずだ。来客もいつもの非でなくたくさん来る。それなのに、主役の俺がこんな河原で同級生に引き倒されてされるがままになっているなんて。まずこの俺様がゆるせない。そう、ゆるせないはずだ。なのに。
「…忍足」
「なん」
「今日は、」
「跡部の誕生日やろ」
しってる。そう言ってヤツはもう一度キスをする。瞬間、俺の目の前がちかっと輝くのがみえた。忍足は続けてキスをふらしてくる。そのたびに俺の体がちかちかと瞬くように輝く。まるであの夜の星がふってきているみたいだ。
「景ちゃん」
おたんじょうびおめでとう。
そう言った男の言葉はぎこちなく、しかしすべらかに俺の鼓膜をノックしてきえた。俺は体中が輝いているかのように熱を憶えるのをはっきりと感じた。ちかちかはせまる。俺のすべてが、目の前の男に向かってゆくのを感じる。
「…俺がうまれてきたことに全身全霊で感謝しろよ」
そう言うと忍足は、そんなん、いつも思うとるよ、とうれしげにわらってみせた。
耳元でちいさく呟かれた「ありがとう」は、発火するような速度で熱さで、あいつが俺の星になる瞬間を、俺はたしかにしってしまったのだった。


作品名:かがやくきみ 作家名:坂下から