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隣にいる幸せ

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一大イベントのテストが無事終了し、いつもの日常に戻った6月の下旬。
とは言ってもまだレコーディングテストが残っているんだけど、そっちは日頃練習しているしまだ日にちもあるから焦る必要はない。
…たぶんその前に赤点の補習がはいるだろうし…。
終わったばっかりでまだテストは返ってきてないけど今からでもわかる。解答用紙真っ白のまま最後まで埋まらなかったしな…。
あーあ、授業が全部実技だったらなー。そうすれば成績だってきっと優秀になるのによー。
そんなことをぼんやり考えながら次の授業の準備をしていると、教室のドアの方から聞き覚えのある声が耳に入った。

「トキヤいるー?」

ひょっこりと教室を覗き込むようにしてトキヤを呼ぶのはAクラスの音也だった。
珍しいな、と意外に思いながら「トキヤは今日休みだぜ」と声をかけると、「あー、あいつ朝からいなかったけど、やっぱり休みだったか…」とがっくりと肩を落とす。
「なんか用でもあったのか?」と聞けば、「それがさー」と音也は困ったように眉を下げてぽりぽりと頬をかいた。

「国語の教科書忘れちゃって…」
「ああ、そんなことか」

「俺今持ってるし、よかったら貸してやるよ」と言うと、「えっ、いいの!?マジ!?サンキュー!」とぱぁっと表情を明るくし、にっこりと嬉しそうに笑みを浮かべた。
教科書貸すだけなのにこんなに喜ばれるとは…。いつも思うけどこいつってすっげー分かりやすいな。表情がころころ変わってすぐ顔に出る。
なんだかそれがおかしくて、くすりと小さく笑いをこぼす。見ていて飽きないっつーか、ホント面白いやつ。
「じゃあ、とってくるからそこで待ってろ」と教科書を取りに教室の中に入っていくと、後ろから「了解!」と元気のいい声が聞こえてきて再び笑みがこぼれた。


「はい、教科書」

「これだろ?」と一応確認しながら手渡すと、表紙を見ながら「そう、これこれ!」と音也はこたえる。
そうしてから「ありがとう翔、ちょっとこれ借りるね!」と言い残しばたばたと走り去っていった。
ったく、いつもながら元気なやつだなー、と過ぎ去る背中を眺めて思う。でもま、そういうところ嫌いじゃねぇけど。
その場でふっとひとつ笑みを漏らしてから、俺も教室へと戻っていった。




「サンキュー翔、おかげで助かったぜ!」

授業が終わり片づけをしていると、先ほどと同じようにドアに立った音也が今度は俺の名前を呼びながら手招きをしていた。
用件はすでに分かっているので駆け足で向かうと、何度目かの感謝の言葉とともに貸していた教科書を差し出される。
「ならよかった」とそれを受け取ると、「あ、そうそう」と思い出したように音也が告げた。

「今日放課後サッカーしようと思うんだけど、翔予定空いてる?」

「テストとかでしばらくやってなかったし、久しぶりに仲間集めてやろうと思ってるんだ」と続けた音也に、「マジで!?やるやる!」と二つ返事で返す。
確かに、最近はテストに向けての勉強漬けで全然やってなかったなぁ。まぁ、そうは言っても俺は全くしてなかったんだけどさ、勉強…。
そんな俺に「じゃあ決まり!」と音也はにこりと明るい笑顔を向けた。

「俺、お前と一緒にサッカーするの好きだからすっげー嬉しい!」

満面の笑みを刷きながら「なんか、お前と組むと無敵!って感じがするんだよなー」とどこか楽しげに言う音也に「それすっげー分かる!」と同感を示す。
「お前とだと本気が出せるっつーか、実力を発揮できるっつーか…」とうまく言葉に表せなくて唸る俺に「あはは、俺も一緒!」と音也は同意の言葉を述べた。
…なんか、こいつもそう思ってくれていたことが嬉しくて、胸がじんわりと暖かくなる。
俺だけじゃなかったんだ。そっか、こいつも…。
そう思うと自然と顔が綻んだ。

「じゃあまた放課後に会おうぜ!」

最後にもう一度にこっと笑ってから「またな!」と手を振る音也に、「ああ、またな!」とこちらも手を振り返す。
本当はもっと話していたかったけど授業開始時間が迫っていたので仕方ない。残念に思いながらも、放課後にまた会うしな、と自分を納得させる。

(サッカー、か…)

最近全然やってなかったし、テストの鬱憤も溜まってるし、何より音也と一緒にできるのがとても嬉しかった。
今からそれがすごく楽しみで、そのことを考えると退屈な授業も、これから返ってくる出来の悪いテストのことも、全部乗り越えられるほどに心が躍っていた。
きっとそれはサッカーができるからっていう理由だけじゃなくて、あいつと、音也と一緒にサッカーができるからこそこんなに舞い上がっているんだと思う。
そんなことを考えながら軽い足取りで席に向かう。
今日はいつも以上に騒ぎまわってやる。もちろん、あいつと一緒に。
そう心に決め、これからのことを思い浮かべる。
晴れ空の下、楽しそうにはしゃぎまわるみんなの姿と、そして隣で笑うあいつの笑顔がありありと想像できて、またひとつ無意識のうちに笑顔が溢れた。


END
作品名:隣にいる幸せ 作家名:凛子