ルック・湊(ルク主)
目の前には、押し倒されているように見える湊と、押し倒しているように見える、見た事もないような異国の女が、いた。
「っちょ!?」
2人に気づいた湊はその状況にまったくもって似つかわしくない呑気な様子で話しかけてきた。
「あ、ルック、詩遠さんー。どうしたんですか?」
お前がどうした!?
ルックだけでなく、詩遠までもが思わず内心で突っ込んだ。
「え、と・・・。湊?あの、今、君達は何をしてんの・・・?」
だが女が口を開いた為、詩遠の問いかけはスルーされた。
「っく・・・。は、なせっ。」
「あーごめんなさい、だって離したらまた僕を襲うとこだったんでしょ?危ないじゃない、そんなの、お互い。」
襲う?危ない!?
ホント何してんのこの2人!?
詩遠はハッとしてルックを見ると、さっきから黙ったままのルックの周りに、とてつもなく何とも言えないオーラが出ているのが見えたような気がした。
おいおい、と思いつつまた、湊に聞く。
「ごめん、湊、状況が分かんないんだけど・・・えっと、何か、その、助けとか、いる?」
「あ、そっか、ごめんなさい。えーと、じゃあ、この女の人を動けないようにつかんでもらって僕から離していただければありがたいです。今、僕ちょっと身動きとれないんで。」
まったくもって状況は分からないまま、詩遠はルックをチラリ、と見たあとで湊らに近づいて言われた通りにする。
近づいてようやく分かったが、女が襲っているように見えるが、ガッチリと湊に身体を固定されており何も動けない状態であるようだった。
「すいません、詩遠さん。えっと、一応その方、僕を暗殺に来られた方みたいなんで、気をつけて下さいね。」
「は!?」
詩遠は唖然としながら、だが慌てて女をしっかりつかんだまま、湊から離す。向こうではルックもポカンとしているようである。
「っくそ。は、離せっ。」
「えーと、湊・・・?」
詩遠は訳が分からないまま、それでも女の手を後ろに回したままガッチリとまたもや女が身動きできないように捕らえる。
ルックはいつの間にか湊の傍に来ていた。
「どうもその方、理由は分からないけど、僕が死んだら戦いが終わると思ってるみたいなんだ。」
「・・・その格好は・・・カラヤの者か。」
「とりあえず牢に・・・」
「いい。逃がしてあげて。」
「「は?」」
ルックと詩遠がありえない、といった表情で湊を見る。女も唖然としているようだ。
「いいよ。どうせここに忍び込むくらいだし、きっと逃げちゃうよ。あ、・・・ルシアさん。」
「・・・恩には着ないぞ。」
「いいよー。でも、ね。とりあえず覚えておいて。僕が死んでも、ジョウイが死んでも、終わらないよ?僕もまったく望んじゃいないけど・・・もう、どっちかの国が負けるまでは終わらないところまで・・・来てるんだと、思う、から・・・。」
「・・・。」
ルシアと呼ばれた女は黙ったまま、緩んだ詩遠の手をふりほどき、去っていった。
「・・・大丈夫だった?湊?」
ルックが湊を抱きしめて、ソッと囁いた。湊は“うん”と嬉しそうに抱きつき返している。
が、詩遠は見た。
抱きつかれていて湊には見えないが、ルックの顔が相当やさぐれた感じになって、ルシアが去って行った方を見ているのを。
うっわ、超怖っ、心、狭っ、ていうかほんとルックのヤキモチもたいがいだよね?
あきらかに湊を暗殺に来た事よりも、あの状況をおもしろくないと思っているのが手に取るように分かる。まあ湊はこんな感じでも意外なくらい力持ちでいて戦闘も強いからねぇ。その辺はすぐに問題ないとは思ったんだろうけど。
詩遠は呆れたように思いつつもおかしくて、ニヤリと笑ってしまい、気づかれたルックにジロリと睨まれていた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ