ルック・湊(ルク主)
湊の顔つきが変わった。そして駆けだす。
「ちょ、湊!」
ルックがその後を追い、そして皆も続いた。
果たしてそこには金色に輝く、とてつもなく大きな狼がいた。
「こいつは・・・」
とりあえず魔法の耐性は高かったが、さほど強すぎるという訳でもなくサクっと倒した。だが、今度は外から兵士達の叫び声が聞こえてくる。
街中にまた出ると、街のあちこちに今倒した巨大な金色の狼が徘徊していた。とりあえず襲われているところを助けながら街から脱出した。
「湊さんは無事!?」
外に出たところで、待機していたアップルが問いかける。
「ああ、問題ねぇ。しかし・・・なんだありゃあ。」
ビクトールが閉じた門を振り返りながら言った。
「・・・“獣の紋章”の眷属・・・しもべだね。」
ルックが口を開いた。ビクトールが“獣の紋章?”と聞く。
「ああ、ハイランドがハルモニア神聖国から分かれた時に神官長ヒクサクからブライト王国に伝えられたって話を聞いた事がある。あいつらはその紋章の配下ってわけさ。」
「では・・・ルカ・ブライトがミューズ市民を生贄にしていたというのは・・・」
クラウスが今度はルックに聞いた。
「やつらがいるってことは、本当だろうね。“獣の紋章”を目覚めさせる為に、血が必要だったんだろうさ。」
「そいつが目覚めたらどうなるんだ?」
今度はまたビクトールが聞いた。その度にいちいち向きを変えて説明するルックが、湊は何気に可愛い、と場違いな事を考えていた。
「さあね、ただ・・・人の血で目覚めたのなら、やはり人の血を求める魔獣が紋章の力としてあらわれるんじゃないかな・・・。もっとも、紋章自体はどこかに運び去られたみたいだよ。力を感じたりはしないから・・・」
その時、伝令役のフィッチャーが走ってきた。
「湊殿ー、湊殿ー!!大変です!!王国軍の奴らがもどってきました!!」
「ちきしょう、なんだってこんな時に!!」
ビクトールがうなった。クラウスがつぶやく。
「この時を狙いすましていた、という事ですね・・・。」
「ハァ、ハァ、や、奴ら、北と東から攻め込んできています。逃げるなら西へ・・・」
フィッチャーが言ったが、アップルが慌てたように続けた。
「ま、待って下さい!相手の狙いは、こちらを慌てさせる事です。攻めてきているのは少数で西と南には伏兵がいるはず。ハウザー将軍、軍をまとめて北へ向かって下さい。攻め手の軍の真ん中を突っ切って退却して下さい。そこが伏兵のいる恐れのない場所です。」
「分かった。」
「とっとと逃げるぞ、湊!」
ビクトールが湊に声をかけた。
ジョウイ・・・。湊は黙って動き出した。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ