ルック・湊(ルク主)
そうだった。
湊はそういう子だった。
どこまでも、前向きで、強い子。
・・・いや、もう子、じゃなかったな、とふと詩遠は内心で苦笑した。
それにしても。
ナナミやジョウイの為にもこの国を素晴らしいものにしたい、守りたい、と言っていた湊が。
それほどに・・・、なんだろうね。
「分かった。君がそう望むなら、俺は協力を惜しまないよ。」
すると先ほどはあんなに辛そうだった笑顔が本物の笑顔になった。
「ありがとうございます!!」
「湊は・・・うん、大丈夫だね。」
強いね、と言おうとしてそれを言い変えた。
だが湊はニッコリして言う。
「僕は強いですよ。どうも皆さん、僕がちっこいからか、やたらご心配とかしてくれますけどね、大丈夫、僕は強いです。」
それからふ、と目を伏せる。
「・・・多分・・・ルックの方が・・・大丈夫じゃ、ない・・・。ホントは・・・早く・・・見つけたい。」
「ん。」
「でも、ルックのことだから、きっと強がってるんですよ!最近はあまり毒舌じゃなくなったけど・・・でもね、きっと強がっちゃってシラーってした風きどってるんだから、絶対!」
そしてまたニコリ、と笑う。
二度と見たくない、という湊のあの状態を見ていた詩遠は確かに心配でいたたまれなかった。
だが、とりあえずは湊は大丈夫だ、とホッとして帰ろうと思っていると、湊が詩遠の服の裾を持つ。
「じゃあその・・・協力がてら・・・。泊まっていってもらえませんか・・・?」
「え?」
「こんな夜更けに、心配・・・ありがとうございました。でもやっぱりあの道、夜は危険です。」
「そうでもないけど、ね?じゃあありがとう、そうさせてもらうよ。部屋を・・・」
「そして、あの、詩遠さんさえ嫌じゃなかったら、その、一緒に眠ってもらえないかな、と。」
ほんと、こういうところは相変わらず可愛らしいよね。
詩遠はふ、と顔をほころばせると、湊の頭をポンポン、と撫でた。
「いいよ。じゃあ、明日も早いんだろ。もう、休もうね?」
「はい!ありがとうございます。」
広いベッドで、きっと消えてしまったルックを思い、心細かったんだろう。
一緒にベッドに入ると、湊はギュ、と詩遠に抱きついてきた。
分かるけど・・・ほんと警戒心のない子だね、相変わらず。
「・・・ルック・・・」
すると詩遠の胸元から、聞こえないようなほどの、本当にとても小さな声が聞こえた。
強がり、ね・・・?
詩遠はそっと苦笑したのち、湊の背中に手を回し、優しく抱きしめた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ