ルック・湊(ルク主)
「ヒューゴ、ジョー軍曹。ああ、まあそうだ、な。」
ルシアは少年に対して肯定したが、湊は自分に対しても肯定したととらえたようだ。
「ええええええ!?ルシアさん、こんな大きなお子さんが!?」
「・・・それはどういう意味だ。」
「ふふ、まあいい風にとってたらいいんじゃない?」
詩遠がまだ何か言いそうな湊の口を背後から抱きかかえるようにして抑え、ニッコリとルシアを見た。
「?えっと、初めまして、俺、ヒューゴって言います。」
そんな詩遠と湊の様子に首をかしげつつも、勝気そうに見えた少年は意外にも礼儀正しく挨拶をしてきた。ダックも口を開く。
「俺はジョルディだ。ジョーでいい。」
「初めまして、ヒューゴ、ジョー・・・軍曹。俺は詩遠。」
とりあえず背後から抱きつかれたようになったままなんとか口から手だけを外して湊もニコリとして言った。
「僕は湊!初めまして、ヒューゴ君。アヒ・・・ジョー軍曹ー!」
「僕・・・?え、あ、えと、その、どうも・・・。」
どうやら湊をなぜか勝手に女性とでも思いこんでいたのか“僕”と言った湊に少し驚きつつも顔を赤らめるヒューゴを詩遠はオヤオヤ、と見た。そしてルシアはそんなヒューゴを訝しげに見ている。
湊が何やら楽しげにヒューゴとジョー軍曹に話しかけている隙に、ルシアは湊を離した詩遠に聞いてきた。
「湊は・・・何か変なものでもふりまいているのか?」
「ふふ。普通だと何言ってんの?て感じなんだけどね?あの子に関してはあながち間違ってないね。まあ気をつけることだね、お母さん?あなたの息子さんが恋に落ちないように。」
そして唖然としているルシアの顔を楽しそうに見てから、詩遠は湊に声をかけた。
「湊。そろそろ買い物でもしておこうね?なんてったって全然旅の準備、してなかったし。」
「あ、そうですね!じゃあまたね、ヒューゴ君、アヒ・・・ジョー軍曹!」
湊はニッコリと2人に手を振ってから詩遠の元に来た。そして道具屋などを回る。
「アヒルさん、軍曹さんなんですねー。モフモフしたかったなー。今度お願いしたら怒られるかな・・・?」
「怒りはしないだろうけど、焦るだろうね?」
「そっか・・・。それにしてもなんで別れ際、ルシアさんあんな顔してたんだろ?分かってもらえたと思ってたんですけどね。僕何かしたのかな。」
「ふふ、まあ君は気にしなくていいよ?どのみち分かってないだろうし。」
「え?」
「いや、こちらの話。」
どうせ今晩もこれっぽっちも意識する事なくにこやかにぐっすり眠るんだろうね?
詩遠はニッコリとしたまま思った。ある意味素晴らしい特技でもあるよね。無意識の自己防衛的な。さすがになんら意識もしていない天真爛漫な子をどうにかしようとする趣味はないからね。良かったね?ルック。
「今日は久しぶりに詩遠さんとお泊まりですよね!嬉しいなー。」
部屋に戻る時、湊はそう言ってニッコリと笑顔を詩遠に向けてきた。
「ふふ、そうだね。ほんと嬉しいよ。」
詩遠もニッコリと湊に言った。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ