ルック・湊(ルク主)
疲れ切った2人を余所に、湊は元気よく、着いたグレッグミンスターの街の、某英雄の家のドアをノックする。
「やあ、いらっしゃい。」
グレミオは留守なのか、詩遠がじきじき出迎えてきた。
「こんにちは、詩遠さん!お迎えに来ましたー。」
ニッコリと言う湊に、詩遠もニッコリと微笑み、そしてルックに笑顔のまま聞いた。
「・・・こちらの方って、もしや?」
「・・・ああ、あんたの推測はあってると思うよ。ていうか、僕はちょっと疲れた。ちょっと休ませてくれない?」
「ああ、これは失礼。どうぞ、中へ。そちらの銀髪のお方も、どうぞ。」
詩遠はニッコリと客人を迎え入れた。
クルガンが居間でぼんやりと呆けたように座っているのをしり目に、ルックは隅で湊をジロリ、と睨む。
「ちょっと、湊!いくら気に食わないからって、何してるのさ!腹いせにあの銀髪を連れまわすのはいいにしても、もっと人を増やす事は出来るだろ!?いい加減にしなよね、あれほど少ない人数でダンジョンや山道とかに行ったらダメだと、僕、言ったよね!?」
湊を心配してルックが怒れば、湊は詩遠の背後に隠れ、ギュっと詩遠の袖を持つ。
「だって。ようやくナナミと一緒に出かけられたのに。書状もあのままくれてたら良かったのに。あんな嘘くさい話で邪魔されたんだもん。明らかに罠だってのに、なんでわざわざ・・・でも・・・ごめんなさい、ルック。」
ああ・・・。
湊もあの内容は嘘くさく聞こえたんだ、とルックは思った。
だけど、それとこれとは話が違う。人を増やす事は出来たはずだ。
「ごめんで済む訳ないだろ?ほんとにこの子は!」
「マクドールさん、助けて。」
湊の子犬のような目で後ろから見上げられ、詩遠は思わず抱きしめたくなるのをこらえてルックにニッコリと言った。
「まあまあ、ルック。大丈夫だったんだし、今回は許してあげなよ。」
「詩遠は黙って。今回だけならまだしも、この子いっつも・・・」
「えへへ、やっぱマクドールさん優しい、大好きっ。」
ルックが言いかけている時に、湊はニヘラ、と笑って詩遠の背後から抱きつく。尻尾があるなら、きっとちぎれんばかりに振っていたであろう。
“何この小動物、可愛い”
詩遠も、そして怒っているルックも思わずそう思ってしまったが。
「って、ちょ、離れなよ!だいたい詩遠は甘いんだからね!孫に優しいおじいさんか、君は!」
その時、外からグレミオが帰ってきたのか、“あれ?”という声が聞こえた後で湊らが来てるらしいと分かったようである。
「湊くーん?」
そう呼ぶ声がして、湊は詩遠から離れる。
「おじいちゃん!成程ールック、そうかもね、そんな感じ!えへへ、じゃあ、ありがとうございます、詩遠おじいちゃんっ。」
ニッコリとしながらそう言った湊は、声のしたほうに“はぁい、グレミオさん、今行きまぁす!”と声をかけて行ってしまった。
「・・・。・・・おじい、ちゃん・・・?」
「・・・・・・ブフッ。」
ルックは、なんともいえない詩遠の表情を見て、つい笑ってしまった。
そして思った。
いっそわざとしている行動ならまだ良かったのに。嘘のつけない湊の天然すぎる言動。ほんと、たち悪いよ!
そして気付いた。
・・・逃げられた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ