ルック・湊(ルク主)
「これは強情な。仕方ありませんな。」
ちらり、とレオンが周りを見た。弓兵に指示を出す気か?ルックと詩遠は目を合わせた。その時。
「そうは行くかよ!」
大きな声がしたかと思うと、ビクトールとそしてずっと保護していた、ルカの被害者の一人ともいえる、小さな少女、ピリカが部屋に入ってきた。ずっと湊の元で保護されているのを知っているジョウイも、この場にピリカがやって来た事に驚いている。
皆が唖然としているなか、ピリカが駈け出し、ジョウイのそばにやってくる。
「ピリカ!!な・・・なぜ、ここに・・・」
その間にビクトールが湊に“今のうちに逃げるぞ”と言う。湊らが走って部屋を出て行くのを見たレオンが弓兵に命令しようとしたのでジョウイが慌てて止めた。
「ま、待て!!撃つな!!!!!!!」
弓兵はかまえをやめる。
「なにゆえに・・・ジョウイ殿。」
「すまない・・・。しかし、この子の・・・ピリカの前で・・・」
「いたずらに戦いを長引かせるだけですぞ。」
「・・・分かっている。」
その間に湊らは建物から出る。
「って、ビクトールさん!ピリカがっ。」
「湊、そんな事言ってる場合じゃねえ、行くぞっ!」
有無を言わせないビクトールに引き連れられ、ミューズの出入り口である開閉式の門のところまでやってきた。そこでは開閉するのに必要な取り外し式のハンドルを持ってハイランド兵をおちょくりながら空を浮いているチャコがいた。
とりあえずその場にいたハイランド兵を倒してチャコに聞くと、どうやらシュウの指示があったらしい。湊がつぶやいた。
「・・・シュウさんはすべてお見通しだったってことだね。」
「え?そうなの?ビクトールさんも、シュウさんに言われたの?ピリカちゃんも・・・」
ナナミに聞かれてビクトールがうなずく。
「ああ。『湊殿の心に、シコリを残さない為に』って言ってたぜ。それより逃げるぞ。フリックが軍勢を率いてトトの村まで迎えにくるはずだ。」
「じゃ、じゃあ、ピリカちゃんを連れてきたのも・・・」
「・・・行こうぜ。追いつかれたらやっかいだ。」
青くなって呟いたナナミのセリフには答えず、ビクトールが言いい、歩き出した。ナナミはキュッと唇を噛みながら、それでも後に続いた。
「・・・湊。大丈夫か?」
移動中、ルックが湊に聞いた。
「・・・うん。分かってた事だし。ごめんね、それなのについて来てもらって。」
「そんなのはかまわない。僕は君の望むとおりに。」
「ルック。」
「それが仕事だからね。」
すると、湊がなんともいえない顔をした。
「バカだね、嘘に決まっているだろ。君が大事だからだよ。」
そう言って、先先と進む。湊は顔を真っ赤にして“待って、ルック!”といいながら後を追いかけた。
「なんだぁ、あのくそ甘い2人は。」
それをつい見てしまっていたビクトールが詩遠に言う。
「ふふ、可愛いよね?あんなルックを見れるなんて、ここに来てよかったよ。」
「そんな事言ってるけどお前、湊にちょっかいかけようとしてなかったっけ?」
「それはそれ、だよ、ビクトール。」
詩遠はニッコリと微笑んでビクトールを振り返った。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ