ルック・湊(ルク主)
護衛2
結局軍主を一人で行かせる事が出来なかった。
多分、他にも方法はあったはずであろうに・・・まさかこの自分が女物の服を着る羽目になるとはっ!
ルックはかなり落ち込み気味だった。
いや、もちろんスカートは全力で断った。女物でもパンツくらいあるだろう!ていうか、女達の服装はパンツ率の方が断然高いじゃないかっ。
「大丈夫?ルック?その、ごめん。」
「別に君に謝ってもらわなくてもいい。ていうか、あまりしゃべらないほうがいいんじゃ・・・?声でばれるだろ。まあ君の声だと微妙だろうけど。」
「あ、そか。・・・ってなんで僕の声だと微妙なんだよっ。失礼しちゃうなー。」
「どうどうとスカート履いてた奴の言うセリフじゃない。」
「ど、どうどうとじゃないよっ!」
「なになに、どうしたのー?女の子2人で、喧嘩ぁー?」
その時、不意に幾人かの男が現れた。
ルックの方を向いてた湊は後ろを向く暇もなく、何か布を鼻と口に当てられ、あっけなく意識を手放していた。
くそ、薬かっ。
ルックはすっとロッドを掲げた。だがその前に、ルックも後ろから羽交い絞めにされる。
くそっ、スカートが動きにくいっ。ていうか手を離せよ、汚い手で僕や湊に触れるなっ。
「やめ・・・」
「その手を離せ、くずども。」
誰かの声がした。
「な、なんだお前・・・っぐはっ」
「ぐっ」
「な・・・」
「まだ、何か言うことがあるか?」
「ひ、ひぃっ。くそっ、お、覚えてろよっ」
そしてあっという間に男どもは逃げていった。
「大丈夫か?あら、そこの子はどうやら気絶、させられてるみたいね。ほんとたちの悪い奴らだ。」
見ればそこにいたのは勇ましげな女戦士。
「とりあえず、あそこの階段下にでも運ぼうか。」
そう言うと、その女戦士は軽々と湊を抱きかかえた。ルックは黙ってついていく。
少しの階段を下り、桟橋らしきところに来ると、女戦士は湊をおろし、横たえらせた。布に湖の水をしみこませ、目をおおうように額にのせた。
「あんたは大丈夫か?」
「・・・僕は平気だ・・・。」
「・・・?あれ?あんた、もしかして男の子?なんでそんな格好してるのか知らないけど、だめじゃないか、女の子を危険にさらしたら。」
「分かっている。別にあなたに助けてもらわなくとも、魔法でどうにかするつもりだった。」
・・・手をつかまれていたが・・・。
・・・それに、僕はこの子をやすやすと抱えられるかどうか疑問だが・・・。・・・て、今何か変な事、言ってなかったか・・・?
「あら、それはすまない。つい。わたしはボディーガードを生業としてるからな。」
気を悪くした様子もなく、女戦士は言った。
「この子はガールフレンドか?」
「・・・っはぁ!?ちょ、何言ってる訳!?そんな訳ないだろ!?」
「え?そうなのか?てっきり・・・って、どうやら目が覚めそうだ。」
イラついているルックをものともせず、女戦士が湊を見た。
「ぅん・・・」
ルックの声で気づいたのか、湊がゆっくりと目を開け、のっていた布を持ちつつ起き上がった。
「っれ?」
「気づいたか?」
「あ・・・れ・・・?あ、助けて下さったんですか?ありがとうございます。」
「いや、いいよ。そういえば君達は名前は・・・」
「僕は湊っていいます!・・・?えっと、こちらがルック。」
どうやらムスッとしているらしいルックに首をかしげつつ、湊は名乗った。
「わたしの名はオウラン。やとわれボディーガードを生業としている、今は失業中だけどね。・・・ん?あれ?もしかして、あんたも、男の子、か?」
「はいっ!女の子のふりして、悪党をこらしめようと思ってたんですが・・・どうやら逆に女性に助けられちゃった。」
「あはは、そうだったのか。そちらのルックとやらが否定していたのもこれで分かった。どちらも男の子とは、ね。どうだい?歩けるか?送っていこうか?」
「いえ、それは大丈夫ですけど、あのっ、良かったら仲間になってくれませんか!?」
「仲間?ふむ・・・そうだな、まずはあんたの事情を聞いてからだ。」
湊はかいつまんで話した。
「なるほど、王国軍とねぇ・・・。ふーん・・・。よし、いいだろう。おまえは守りがいがありそうだしね、よろしく、湊。」
「やったぁ!うん、よろしくねっ、オウランさんっ。」
その後、おまえはもう少しここでゆっくりしてるといい、わたしは先に向かおう、とオウランは去って行った。
その際に、しっかり守ってやんなよ、とルックにウインクまでして。
「・・・。」
なんなんだあの人。男同士だって理解、したんなら訳のわかんない事、言わないで欲しいよ。
そりゃあこの子猿を守るのが僕の仕事だからね、もちろん守るさ、あんたに言われなくとも。
・・・守れてなかったけど・・・。
やすやすと捕まってしまった。あんな奴らに。目の前でこの子が倒れるところを呑気にも見ていた。くそっ。
「ね、ねえルック、何怒ってんの?僕が油断してやられちゃったから?ごめんって。」
ムスっとしたままのルックに、湊が声をかける。
「いや・・・ああ、確かに油断してやられるのはどうかと思う、これで君一人で来てたかと思うと、ね。」
「ひ、一人だったらもっと警戒してるよー。ルックがいたから、つい・・・。」
・・・なおさら悪い。僕のいる意味は、なんだ。かえってろくな目にしか合わせてないじゃないか。
ルックはため息をついた。
「でもほんと、一緒に来てくれてありがとうね、ルック。」
そんなルックに、湊はにっこりと笑いかけた。
「は・・・?僕は何一つ、役に立ててないんだけど・・・?」
「え?なんで?ルックがこうやって一緒に来てくれるだけで、僕は嬉しいよ?」
何を当たり前な、ぐらいの勢いで湊は言う。それから立ち上がり、ほこりをはらってニッコリとした。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。どうやらオウランさんが悪党をこらしめてくれたみたいだし。僕、おなかすいたよ。」
そんな湊を、ルックはあきれて見ていたが、ふ、と笑いがこみあげてきた。
なぜか色々とイライラしたけど、そんな事、どうでもいいような気がしてきた。
とりあえず、帰ったら速攻でこの足にまとわりつく鬱陶い代物を着替えて、それからなんやかんや言ってこれを履かせたシーナを絞めにいこう。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ