ルック・湊(ルク主)
喚起1
どうやらグリンヒルが王国軍に落とされたらしい。
シュウが主要人物を集めてそう言った。そして、今でも人望の厚いグリンヒル市長のテレーズを助け出す作戦に出た。
とりあえず、湊と数人でもともと大学都市であるグリンヒルの学校に転入するといった形で忍び込むのである。
「だからといって、なんで俺が保護者なんだよ・・・。まったく・・・。」
保護者役として、フリックが同行する事になった。
あとは生徒として扮装出来るような人物を選ばなくてはならない。
久しぶりにナナミもついて来るらしく、後はルックとフッチ、それに女の子がナナミ一人だと面白くないだろう、とアイリを同行させる事にした。
ルックを誘うと、いつものように、“ついて行ってあげてもいいよ”と言ってくれたが、どうもここのところ様子が変なような気がして、湊は軽く首をかしげた。
一向はグリンヒルの目前で、偽造入学手配をしてきたフィッチャーと落ち合う。
「やるしかないのか・・・わかったよ。さあて、行くか、リーダー。」
フリックが言った言葉にフィッチャーは飛びあがる。
「フリックさん!リーダーなんて呼んだらすぐばれてしまいますよ!この書類、名前のところは空いてますから、何か偽名でも入れておいて下さい、湊様のお名前はなんらかの形でバレる可能性ありますしね。」
「どうする?名前はお前が決めてくれ。」
フィッチャーが行った後で、フリックが言った。
「じゃあ、じゃあ、そうねーわたしはエリザベスにしようかなー。」
「・・・。リーダー、どうする?」
「んー。ナナミは好きにすればいいよ。僕はねーどうしようかな。カナデとか・・・ケイトとか・・・」
「なんだか女の子みたいで可愛いですね。」
何気にフッチがニッコリと突っ込む。そしてなぜか何気にルックがそれにピクリ、と反応していた。
「ええ?そう?じゃあ、ユウリでっ。」
「よし、じゃあ行こうか。」
「ええ、だめだめ、フリックさんも名前決めなきゃ!」
ナナミが言った。
「俺も?」
「うーん、じゃあシュトルテハイム・ラインバッハ3世で。」
「あのなあ・・・俺はそのままでいい。じゃあいくぞ、ミナ・・・じゃなかった、ユウリ。」
そうしてグリンヒル内に潜入した。
途中でなにやら王国軍に絡まれていた少女を助ける。
主にナナミが我慢できずに、湊をけしかけたわけだったが。
そんな湊に向かおうとした王国軍の男に、ため息をついてからフリックがたちはだかった。
「ちょっと待った。子供相手に大人げないぞ。」
「何を言う!ハイランド王国の兵士をバカにしたんだ。それなりの覚悟はしてもらうぞ!」
「覚悟だと・・・・。なら、俺と戦って首を落とされても文句は言わない覚悟は出来ているんだろうな。」
「く・・・・。ふ、ふん、まあ、いい。確かに大人げない事だ。今日のところは許してやる。」
フリックに青くなった兵士は、そう言うと逃げるように去って行った。
「そりゃありがとさん。ほら、行くぞ、ミナ・・・ユウリ達。」
そうして助けた少女を見ることもなくフリックは歩き出した。
「フリックさん、カッコよかったよ!ねえ、ユーリッ」
ナナミがニコニコと言った。湊もニッコリとうなずく。
「うん、カッコよかった。さすがラインバッハ先生っ。」
「・・・お前、褒める気、ないだろう・・・?」
「そんな事ないよっ、ねえ、ルック!格好良かったよね。」
「知らない。」
そっけなくルックに返されて、湊はえー、とつぶやいていた。
とりあえずその後、無事入学手続きも終わり、フリックは保護者がとりあえず泊まれる施設へ、他のみんなは学校の寮へやってきた。
「ルックと同部屋で良かったよっ。ナナミはアイリと同室だし。あ、でもフッチは一人部屋になってたねぇ、寂しくないかなっ?」
「僕がフッチと代わるよ。」
「えっ!?なんで?もしかして、僕と一緒の部屋、嫌だった?」
ルックが代わる、と言うと、湊はあきらかにショックを受けたように言った。
「いや・・・。別に・・・。言ってみただけ・・・。」
「そうなの?ルック、大丈夫?」
「は?何が。」
「うん、だって、最近・・・特になんか今日、元気、なくない?」
「そんな事ない。ほら、食堂、行くんだろ。早くしなよ。」
ルックはさっさと部屋のドアを開けて、湊に言った。
湊は、待ってよー、といいながら荷物をまとめていた。
・・・おかしい。
本当なら、僕は一人が絶対いいはずなのに。
なぜ、別に、とか言ったんだ。
元気、ない、だって?
別に元気がないわけじゃない。ただ、そう、ただ、なんだか分からないだけだ。
色々と、分からないだけ、だ。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ