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ひとり降霊大会

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 俺はマリックが好きだった。そしてマリックもまた俺のことが好きだった。理由はたったそれだけだ。しかし、それだけで充分だ。それだけが、俺が今此処に立っている理由だ。そしてそれ以外にありえない。俺はマリックが好きだった。マリックも俺が好きだった。脳内で俺はその言葉を何度も繰り返す。


 一体誰が供えたのだろう(阿帝奈かもしれないし、白碑かもしれない、まさかルパン、大穴でウサギ)白い菊と黄色い菊が365号線をたまに走る車の排気ガスに煽られて揺れている。マリックの運転するトヨタ自動車と熱烈なキッスをして、マリックを殺し俺を重体にさせた(いつの間にマリックの運転するトヨタ自動車との愛を実らせたのだろう)電柱は、ぽきりと根元から折れたままの姿を晒していた。その根元に転がる、安そうな薄いピンク色の包装紙に包まれた二色の菊は俺をなんともいえない気持ちにさせる。薄ら寒いような落ち着かない気持ちだ。感傷的とこれを呼ぶのだったら、そんなものは、俺には一生必要のないものだ、と断言する。俺は努めて無表情を装う。無駄な行為だろうか。いや、俺はそう思わない。どこかで、俺を見ているやつがいるからだ。きっと、いる。
 ふと、菊を買い(白では寂しいから黄色も一緒に買ったのだろうか、それとも黄色では派出すぎるからと白もあわせたのだろうか、それとも二色一緒に最初から束になっていたのだろうか)ここまで持ってきた人物(阿帝奈か白碑かルパンか大穴でウサギ、あ、俺はもうひとり意外な人物を見つけた、高谷真理はどうだ、以外とそれが正解なのかもしれない、とありえない正解を見つけて喜ぶ俺は退化しているだろうか)の、電柱の側に菊の花束を供えた気持ちを考える。どうして菊を供えるのだろう。違う、俺の不思議に思うことは、菊が何故供え物になるかということではなく、どうしてここに菊を置くのか、ということだ。この菊はマリックに供えるものだろう。しかし、ここに、マリックはいない。俺は、ぽきりと折れて強くこすったら手のひらに血の浮きそうな断面をさらしている数ヶ月前には電柱だったコンクリートの筒を、覗き込む。そこには延々と暗闇が広がっているだけだった。ここに、マリックはいない。暗闇がとぐろをまいているだけだ。
 いつの間にか陽は沈み、濃い青が俺の周りを包んでいる。見上げればきっと星が瞬いているだろう。死してマリックは星になったか、あの、闇に小さく輝く星になったか。人が死んだら星になるだなんて、もう忘れ去られた幻想だ。マリックは星になどなっていない、この電柱の側にぼんやりと立っていて、菊を供えた人間に礼を言ってもいないし、またその菊を受け取ってもいない(マリックの体は燃やされて灰になってしまった)。


 マリックはいない。マリックはもうひとりの俺だった。俺はマリックであり、マリックは俺であった。マリックはいない。マリックはどこにいるのか。俺はマリックが好きだった。マリックも俺が好きだった。それだけが、俺が今此処に立っている理由だ。365号線を走る車のヘッドライトが俺を照らした。一瞬だけ長く影が伸びる。影はひとつだけだった。俺は待っている。マリックがあらわれるのを。(「奈津川シートベルトを締めろ!」)シートベルトは締めていない。そのかわりお前の声が俺を締め上げている。

作品名:ひとり降霊大会 作家名:ねこだ