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【Noelシリーズ 4】 Love Me Tendar

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猫はまた抱き上げてもらおうと擦り寄って来ようとしたが、ドラコは除けるように身をひねっただけで無視する。
その態度にハリーは激しく戸惑った。
あのドラコが溺愛しているノエルを無視することなど、今まで一度たりともなかったからだ。
「まてよ、ドラコ!」
追いすがってくる声を背に足早に廊下を駆け抜け、階段を上り、寝室に足を踏み入れると、おもむろに杖を取り出し強力な鍵の呪文をドアノブにかけた。
ガチャリという重々しい音が部屋に響く。

後を追ってきたハリーはそのドアを開けようとしてロックがかけられていることに愕然として、慌ててドアの向こうからドラコの名前を呼んだ。
「どうしちゃったんだよ、鍵までかけて。何か気に障ることをしたのなら謝るから、このドアを開けてくれよ。顔を見せてくれよ、――ドラコ」
ドアを何度もノックする。
つられるように猫の爪で引っかくような音とニャーニャーという泣き声も響いてきた。
ドラコはベッドに突っ伏すと、枕の中に頭をうずめ、耳をふさいだ。

――何も聞きたくはない。
『裏切られた』という思いだけで、頭がいっぱいになり、低い嗚咽が漏れた。
どんな言い訳も、謝りの言葉も聴きたくはなかった。

一段とドアを叩く音が大きくなってきた。
ノブをガチャガチャと何度もまわし続けている。
「ドラコ!」「ドラコ!」と何度も心配気で不安そうな声が聞こえてきた。
たまらず、ドラコは目をギュッと瞑った。
「入ってくるなっ!あっちへ行け!」
鋭く突き放す言葉は震えていて、どこか掠れている。
必死の口調で相手が叫んでいるらしい。

「……ドラコ……」
ハリーはドアをノックする手を止めると、静まり返った廊下に、中から鼻をすする音が響いてきた。
泣き顔のドラコが脳裏に浮かぶ。
本当に泣いているかもしれない。
ドラコはプライドが高く、絶対に泣き顔など見せない性格だった。

……いくら強力な呪文をかけられたとしても、ハリーの持っている杖で破壊できないものなど、ひとつもない。
施錠された術を破り、ドアを開けて中に入ることなど、ハリーには簡単なことだったけれど、あえてそれをしなかった。


――鍵を下ろし閉じこもったドラコは、誰にも邪魔されず、ひとりになりたかったことが、ハリーにもよく分かったからだ。