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【Noelシリーズ 4】 Love Me Tendar

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(……ああ、ダメだ。よせ――)
そう言いたいのに、出てくるのは甘ったるい声ばかりだ。
ひたいから後頭部へと何度も撫でられて、毛並みをブラッシングするように指が滑っていく。
ブルブルと全身が震えた。
とろけるような快感が押し寄せてきて、無意識のうちに喉がゴロゴロと鳴る。「もっと」と言わんばかりに、ハリーのからだに自分の背を何度も擦り付ける。

ハリーは目を細めて笑いながら、子猫の耳に指を這わす。
薄い毛で覆われた内側は、信じられないほど敏感だった。
あまりの気持ちよさに、足のちからが抜けて立っていることすら出来なくなったドラコは、くったりとハリーの膝の上に寝転んでしまう。
「ニャウ、ナーーー……」
甘えた声が自然に漏れてきて、しっぽがパタパタと機嫌よくリズムを取った。それがハリーのスラックスの生地を甘くたたく。
「気持ちいいの?」
ハリーの声もどこか嬉しそうだ。

「ナゥ……、ンナァーーーン」
ドラコはネコ語のまま、何度もとろけるような声を出して頷く。
ハリーは手をずらして、ドラコの背中のラインに沿うように頭から尻尾の先まで、一気に撫でていった。
ゾクゾクという悪寒にも似た振るえが、全身に広がっていく。
ブルブルと小刻みにからだが震えてどうしようもない。
ハリーの手はドラコの悦びのすべてを知り尽くしているようにすら感じる。
ドラコは安心したように手足をくったりと伸ばしたまま、全身を相手の上にからだを預けた。
ハリーの手はドラコのからだというからだのラインを撫でていく。
ドラコはされるがままになりながら、相手のしたいようにさせていた。
体中が暖かくて、ひどく満ち足りていくのを感じた。

やがてハリーの指がドラコの鼻先をツンツンと突いてきた。
あまりの気持ちよさにうっとりと夢見心地のまま、ドラコは首を伸ばし顔を上げると、相手が自分を見つめているのに気付く。
明るく澄んでいるエメラルドの瞳は、ドラコの一番好きな色だった。
魅入られたようにじっと見つめ続けていると、相手はフッと笑みを浮かべてそのまま屈みこみ、ドラコに近づいてくる。

迫ってくる相手の顔はかなり大きかった。
眼鏡だってまったくイケてないスチール製だし、黒髪だってくせ毛のくせにろくに手入れしていないから、手に負えない困り果てた姿に成り果てている。
顔だって、今の自分の知っている相手より断然若い。
ドラコの好きな香水だって付けていなかった。

ホグワーツの頃のハリーなんか、ドラコはちっとも好きじゃない。
低俗で意地が悪くて、無神経で、ガキで、英雄きどりで、大嫌いだったはずなのに……。

それなのに――……。

結局ドラコにとって、どんなハリーもハリーでしかない。

あの緑色の瞳を細めて笑いながらハリーが顔を寄せくると、ドラコは期待で胸が激しく高鳴るのを感じた。
相手の手がパッと開き、ドラコの柔らかい毛並みの中へと潜り込む感触に、たまらずドラコは大きく喘ぐ。
自然と喉がゴロゴロと鳴り、歌うような声が溢れた。

ハリーは信じられないくらいキスが上手なことは、ドラコ自身がよく知っていて、期待で自分のほうから相手に擦り寄っていった。
じれるほどゆっくりとハリーの顔が近づいてドラコのほほに触れようとしたときに、バタンという大きな音が部屋に響いてきた。

地響きに近い、空気を振るわせるその音の大きさにドラコは飛び上がる。
夢から覚めたように瞬きを繰り返すと、自分に向かって何人ものグリフィンドール生がやってくるのが見えた。
ばたばたという乱暴な靴音に、ドラコの何倍もあろうかというほどの大きなからだ。
いまいましい赤と金のネクタイが、緩んだシャツの胸元で揺れている。

「なに?なにがいるんだ、ハリー」
「それ、どこで見つけたんだ?」
「ネコ?ネコなのか」
「どれどれ……」
口々に言いながら、こちらへと向かってくる集団。

ドラコは一瞬でパニックに陥ってしまう。
考える前にからだが反応して、ハリーの手をすり抜けると走り出した。
トンと勢いをつけてジャンプして床へと着地すると、一目散で逃げ出す。
ドアを目指して走ろうとしたけれど、好奇心が強いディーンがドラコの背を追いかけた。
追ってくる手を右に左に除けながら走り回っていると、誰かがドアを閉めてしまった。
ドラコは失意の声を上げるとドアからの脱出を諦め、カーテンに爪を立てながら窓の桟へとよじ登る。
そうして窓ガラスから下を覗き込んで動けなくなってしまった。
この部屋はドラコが予想したより、ずっと高い位置にあったからだ。
どこを見ても飛び移れそうな木や枝など一本もない。

グリフィンドールの一団はドラコの周りを円陣を組むように取り囲んで、じりじりと近づいてきた。
ショックと焦りでドラコは小さなからだを震わせると、決死のダイブで大きく跳ねるようにロンの肩に飛びつき思いっきり引っかくと、そのまま一目散にハリーがあっけに取られて座っているベッドの下へと深くもぐりこんだのだった。

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