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だから魔族は滅びを願う。

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リナは別の人間になって生まれていた。
リナの魂は覚えている。
あの闇の青年を。
永遠の時を生きる存在として。

どの時代の彼女の魂は強く、
そして美しく輝いていた。

闇の青年は彼女が生きているのを知り、






そして必ず会いに行く。







________________





そこは大会へと続く大いなる河。

闇をまとった青年はそこへと静かに降り立った。



あたりは静まり返り、
河の流れる音だけが無限に聞こえるだけ。


その夜に青年は解けてしまっているかのようにも見えた。




その河のほとりは死者を送り出す岸辺だった。


そこに1人の少女が炎の前に佇んでいた。
炎の前の石に座り、
膝を組んでいる。
瞳に炎のがちらちらとゆれていた。

その少女はあの太陽を一心に浴びたような髪色をもっている。

青年は間違えない。
見間違えるはずもない。

彼は一歩近づき、ふいに声にした。



「リナさん・・・」


リナと呼ばれた少女ははっとして顔をあげ振り返った。


「あ・・・、あんたは・・・?!」


びっくりした顔で振り返った少女はまさしく青年の知る"リナ"であった。


「ご・・・ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃって・・・
 だって、こんな夜更けに、いきなり男の人に背後から自分の名前を呼ばれるんですもの!
 てっきり、私__。」


(やはり、この時代のリナさんもリナという名前なんですか・・・
 前世でも、リナさんはリナさんだった)


青年は目を細め、彼女を見た。
目の前の少女は自分の胸をなでおろし、ふうっとため息をついた。


「いくら神官様でも、女性の背後に回るのはよくないと思いますよ?

 でも・・・
 うれしいです。
 神官様にお会いできて、
 
 私だけの弔いだったので・・・
 あたし、お金もなくて、弟のお葬式を開いてやることすらできなかったので・・・

 通りすがりの神官様、
 どうぞお願いです。

 この精一杯生きた小さな命にせめて祈りをささげてあげてくださいませんか?」


目頭を拭き、リナは彼の前にひざまずき、両手を胸の前で合わせ、祈った。


彼女はこの闇の青年を神の神官と勘違いしているようだった。


青年は苦笑した。


(無理もないですよね・・・僕の格好は本当に神官の格好ですから。
 僕はリナさんが信じる神とは全く相反するものに従っているいるというにに。

 ここは死者を弔う場所ですし、
この時代のリナさんは誰かを亡くされたんでしょうね。)


ややあって、ゼロスは炎の中を見た。


美しく煌く炎は悪魔のささやきのように吸い込まれていきそうだった。


小さな箱が炎の向こうで揺らめいている。


「この中にいる方は?」


「あたしの弟よ。
ふふ、つい2週間前までは元気に走り回っていたのよ?

でもね・・
でも、この子はあたしをオ置いて逝ってしまったわ。
まだ、たったの5歳だったのよ。」


「そうだったんですか。」


「でも、最後に神官様に祈ってもらえるなら、なんて贅沢な子だったのかしらと思うわ。
 これで、この子も迷わない。」


リナはその綺麗な紅色の下唇を噛むと、節目がちにゼロスを見たのだった。


ゼロスは静かにその意思を汲み取ると、


「リナさん、
 少し炎から離れてください。」
そっと、言った。

リナはおとなしく彼の指示にしたがった。


そこにいる闇の青年は、
眼をつぶり、
錫杖を地面へと一度軽く叩いた。


すると、炎はまるで生きているかのように燃え上がり、
その炎はまるで竜になって天まで届き、
竜は天へと帰っていった。


あっという間の出来事だった。


「あの子は竜と一緒に空へとかえってしまった。」


リナは呆然とし、そのまま力尽きたようにその場に座り込んでしまった。

いつまででも、リナは空を見続けていた。


青年はしばらくリナと一緒に寄り添っていたが、


またほの暗い闇へと身を投じたのであった。







つづく