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火種の予感

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 くるりと回ってバズーカを連射する。威力こそは多くの敵に敵わないが、素早く動き回りながらも狙撃は正確というのはバンブルビーの得意分野だ。はしゃいだ声をたてることもなく、顔面の保護シールドを降ろした視界でディセプコンを捕らえては、止まることなく暴れてやる。力仕事こそ無理でも、これはバンブルビーの役割なのだから、当然だ。
 泥をまき散らして暴れるディセプティコンの全長は、小さなオートボットなど一飲みしてしまいそうなほどだ。知能がないのか名乗ることさえしないので、名前はわからない。だが、あまり戦闘経験はないようだった。バンブルビーからすれば、あまり危機感を覚えない戦い方だ。これはおとりだろうか――そう思ったバンブルビーの背後で、金属の咆哮が耳障りに響く。
 それはスタースクリームが、彼の仲間を翻弄する黄色いチビの背後へ回ろうとした瞬間だった。
 だが、エネルギーソードが鋭くその間に割り込む。
 おかげで、航空参謀の腕はあやうく切断されるところだった。エネルギーソードで割り込んだ張本人、オプティマス・プライムは吐き捨てた。
「相変わらず卑怯なやり口だな、スタースクリーム!」
「オプティマス!」
 スタースクリームが吼えた。憎しみに満ちた声は怒りを偽装することもしない。強かな策略を凝らす参謀とは思えない様子だったが、粗暴な、ディセプティコンに似合っている。そう思い、オプティマスは嫌悪を露に鼻で笑うと、エネルギーソードを構え直し、ぎぃぎぃと軋む音をたてながら敵意を明らかに向けるスタースクリームに向かいなおした。
「わたしの部下になにをする」
 スタースクリームはあわてて宙転するようにトランスフォームすると舌打ちのような音を吐いた。
「くそ! 撤退! 撤退だディセプティコン!!!!」
「逃がすか!」
 オプティマスはせめてスタースクリームの足を引きちぎってやろうと手を伸ばしたが、つま先がその表面をかすめただけだった。
 せめてと打ち出したエネルギー弾も相殺される。
 一方、小さな仲間と戦っていたディセプティコンのほうはといえば、鋭く打ち込まれた肘の攻撃に、ぼろぼろと鉄くずをこぼし、スタースクリームよりも早く、とびさってしまった。
「惜しかったな」
「いえ。助かりました」
 小さな仲間が追撃をやめて向きなおす。まだこの小さな仲間の言葉はすこし堅くるしいが、指摘するほどのことでもないので注意はしない。
「当然のことだ。しかしこのような場所にもでてくるとは、ディセプティコンの活動がまた活発になっているようだな」
「なぜでしょう」
「ふむ――いやな予感がするな」
 オプティマスは代表するようにつぶやいた。こうしたたぐいの予感はいつも的中してしまう。また勇敢な青年の力を借りねばならぬ時が近づいているのではないかと危惧するのは、好ましいことではないのだが。
作品名:火種の予感 作家名:しゅうぞう