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認識したのはどっちが先か

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 自分で言っててちょっぴりヘコみそうにはなるが、それはそれ。
 とにかく断ろうとして──
「………好きな相手送りたいと思うの、変か?」
 きょとん、としながら言う鬼道に、思わず止まる。
 そして、止まったままの横島に笑い掛け、膝を曲げ、耳元に唇を寄せ。
「………愛しとるよ?横島………」
 そっと優しく、囁いた。


 …そう、殆ど同時に、それぞれ告白されて。
 意識の遠くなる二人の最後の思考も、全く一緒。

 ──結論。
 天然って、最強。

「きゃ~!?令子ちゃん、どうしたの~!?」
「横島ぁーーー!?」

 …そして気を失った二人が、次に目を覚ました時。
 それぞれ相手の家だという事に気付いて、更に再び想いを告げられて、焦りまくるハメになったりする。





「うぅぅ…美神さん…俺はもう駄目です…ベタ惚れです…」
「…私もよ、横島クン…」
 後日。
 沈痛な面持ちで言葉を交わす横島と美神。
 幾許かの間。
 そして。
「相手男なのにーーー!!しかし周りが既にフツーに付き合ってると思ってただなんて何てこったー!!いや何かそんな風に言ってた気もしてたけど!!考えないよーにしてたのに!!つーかこんなんじゃもう逃げられねぇ!!てゆーかそれが嫌じゃない俺は何なんだーーー!!!」
「だってだって冥子が“あの”六道のおばさまに真正面から私の事で立ち向かったのよー!?ついほだされちゃったのよー!!戻ってこれない感がひしひしとっ!!あああっでもそれもいーかなーなんて思ってる私は何なのーーー!!?」
 …どうやら、随分と大変な事になっている様だ。


 因みに。
 周囲から見てみれば、既に両カップル共に、砂どころか砂糖吐きそうになる程のバカップルなのは、言うまでもない事である。





 そして、こちらも後日。
「令子ちゃん、可愛かった~v」
「横島も可愛かったで?」
「令子ちゃんの方が可愛いもん~。横島クンは男の子なんだから~、かっこいいとか言われたいと思うし~」
「そやなぁ…。けど、ボクから見るとやっぱり可愛いしなぁ…。ちゃんと男の子しとるし、そこらの大人よりよっぽど芯は強いと思うけど」
「あ~、マーくんノロケてる~」
「…冥子はんに言われたないで?それに、ボクはただ思うとる事を正直に述べただけや」
「え~、だって令子ちゃんが可愛いのは本当の事だし~。優しくて綺麗でかっこいいのも本当だけど~v」
 全くの自然体の鬼道と、楽しそうに、美神の事を自慢している様にしか見えない冥子と。
 そんな二人を前にして。
「あなた達~!!自分達が何を言ってるのか解ってるの~!?」
 冥子の母であり六道女学院の理事、六道当主は怒り顔。
 何せ、実の娘と六女の教諭。
 二人して一般的に見れば物の見事に道を外しているのだから、彼女の立場としては当然だ。
 しかし、そんな怒りも二人には何処吹く風で。
「だって~…冥子は令子ちゃんじゃなきゃ嫌なの~!!」
「…すんませんが、ボクの人生、これ以上他の人間に好きにされる気はありまへんので。出て行け言うなら出て行きますし。…これから先、ボクの好きな様に生かせて頂きますわ。世話になった恩ならその内返します。本当に霊能を持った教師の少ない霊能科、ボクが抜けたらまた少なくなるでしょうが、そこは理事の手腕で頑張って下さい」
 だだっ子の様に首をイヤイヤと振りつつも、式神達の制御はきっちりしており、母親にコントロールを奪われてお仕置きを受けない様に(無意識に)している冥子。
 にっこりと朗らかに笑いつつ、しかしキッパリと己の確固たる意志を示す鬼道。…何気に脅しちっくだったりもするが、天然と本気で言っている為、タチが悪い。
 当主、顔を幾分か引き攣らせ、沈黙。
 …分が悪い。
「…解りました~。この件に関しては不問にしましょう~。…だけど~」
 きっ、と二人を睨んで、口を開きかけるが──
「わぁ~い、令子ちゃんお嫁に貰う事認められた~♪」
 冥子のノーテンキな喜びの声に遮られ。
「心配せんでも、高校生に関係迫る気はあらしませんので。六女の評判落とす様な真似はせぇへんですよ」
 さらりとした鬼道の言葉と笑みに、完全に阻まれた。
 脱力しつつ、それでも一応。
「…女同士で結婚は出来ないわよ~。それに、令子ちゃんがお嫁さんになるの~?」
 しかし、そんな娘への突っ込みも。
「じゃあ、お婿さん~v」
「………冥子ぉ~………」
 その娘からの無邪気で天然、お子様な返しに、何の意味も無く。
「ほな、ボクはこれで」
「あ~、待って~、マーくん~。冥子も行く~」
 隙をついてかさっさと呼び出されていた理事長室を出て行く二人を、何も出来ずに見送る当主。
 その口から漏れる呟きは一つ。
「………冥子は横島クンと、鬼道君は令子ちゃんと、だったら良かったのに~」
 溜息と共に。
 世の中は、ままならない。
 理事長室には、そんな事を思う当主のみが残された。

 ────合掌。





オマケ

「でも~、仲良かったわよね~。マーくんと横島クン~」
「ん?そうか?」
「そうよ~。だって、あ~んvって、してたもん~」
「…いや、あーんて………………はっ!?」
 今頃気付いて硬直する鬼道。
 あの時はサッパリ気付いて無かったのだが──今更ながらに自分がどんなに恥ずかしい事をしていたのか自覚し、顔を赤くする鬼道だった。
「冥子も~、令子ちゃんにしてもらって、嬉しかった~v」
 隣で鬼道の様子に気付く事無くトリップしているしている冥子の方が、天然度は上の様だったが…無論、そんな事は一つの慰めにもならなかった。