なきひば
いつもそんな言葉を口にする相手が、唯一お気に召すのは戦いのことばかり。
逆にそれには全く興味のない……いや、むしろ忌避したくてしょうがない綱吉からすれば、どうしてなんだろうと不思議に思うくらいだ。
どうしてそんなに戦いたがるんだろう?
そして、どうして自分はこんな人と付き合っているんだろう?
いや、そもそもこれは付き合っていると言えるのか?
キスもした(唇が切れて血が出たけど)。
セックスもした(いろんな所かボロボロになったけど)。
でも、雲雀と自分はどこもかしこも違いすぎて、お付き合いをしている実感なんてこれっぽっちもない。
だからつい、そんなばかなことを訊いてしまったんだと思う。
「ヒバリさんは、オレがもう二度とヒバリさんと戦わないって言ったら、オレのこと嫌いになりますか?」
綱吉の問いに、珍しく雲雀が硬直した。
きっかり二秒。そののち、ぱちりと瞬きをする。
「あ」
「……今日は帰る」
雲雀はそう言うなり、いつもと同じように窓からさっと飛び出した。
瞬いた雲雀の目尻から落ちたのは、涙?
え? そんなばかな。
けれど、ゆゆしき自体なのは間違いがない。
「ま、待ってくださいヒバリさん!」
綱吉は大声で、それこそここ一番のときにしか……ハイパーのときにしか出したことがないような大声でそう言った。
そして、慌てて窓枠から身を乗り出す。
雲雀の姿はすでにない。
けれど、まだ近くにいる、そんな気がした。
「でも、オレは何が起きても好きです!」
さすがに誰がと叫ぶことはできなくて、精一杯の気持ちでそう言った。
雲雀に届いたかはわからない。
けれど、次の日もまるで毎朝同じ時間にえさをついばみに来る鳥みたいに、雲雀は綱吉の部屋の窓をノックしたから、きっとそれでよかった。