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T&J

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談話室で一人用のソファーに座って本を読んでいたハーマイオニーは、そんなふたりに気づいて「おはよう」と笑いかけて、こちらに近づいてきた。

「今日の一時限目の変身術って、きっと馬だとわたしは思うの。だから予習しちゃった」
「なんで、そう思うのさ、ハーマイオニー?」ロンが首を傾げる。
「だって猫から犬ときたらもっと大きいものに挑戦するから、次は馬でしょ、絶対に」
「いーや、僕は豚だと思うね。みんなが互いに術を掛け合って、ブーブー言うのを見るのは楽しいな。きっと今日はそれだよ」
「んまぁ!女の子はね、絶対にそんな変身を掛けられた相手は、死ぬまで恨むと思うわよ!だって女の子ですものっ!それをひどい想像しかしないなんて、やっぱりロンは子どもねっ!」
「なんだって!」
互いににらみ合って朝から一触即発の雰囲気にもハリーは動じずに、ただソワソワと食堂に行きたそうにしていた。
「ねえ、ハリーはどう思うの?」
突然話題を振られて、ハリーは困った顔で答える。
「悪いけど、僕はどちらにも興味がないよ」
するとハーマイオニーは「あら?」という素振りで、急に何かに気づいたようにハリーに近寄っていく。

ハリーのローブのはしをぎゅっと握り締めると、つま先でツイと立ち上がって、ハリーの首元に顔を寄せて瞳を閉じた。
その様子がどう見ても、ハリーにキスをねだっているように見えて、ロンはびっくりして大声を出した。
「何しているんだ、ハーマイオニー!!」
「――えっ?」
不思議そうにロンを見返して、またすぐにハリーの首筋に戻り、顔を寄せて鼻を動かした。
「なに、ハリー?この香りは?香水でも使ったの?」
ハーマイオニーが顔を上げて笑うと、それを受けてハリーもニッコリと笑った。

「分かる?分かってくれる、ハーマイオニー?!どうかな、この香りは?」
「悪くないわよ」
笑ってまんざらでもない顔で答える。
「最初に匂ってくるトップノートは森の香りが強い、マンダリン、ラベンダーと何かの植物ね。中間のミドルノートはジャスミンやバジル、ゼラニウムってところかしら?最後に残るラストノートはサンダルウッドだわ。それがヴェルティヴェールに変化して、残り香をさわやかに漂わせるタイプね。あまり香水っぽくないところも、いいわよ」
自分の見立てに間違いはなかったことを褒められて、ハリーは嬉しそうだ。

ハーマイオニーはやさしく笑って少しからだを離すと、上から下までじっとハリーの姿を検分した。
「――あらあら、本当に見違えたじゃない、ハリー!きちんとアイロンが当たった服を着て、靴までピカピカにみがきたてて素敵よ。しかも香水付きだなんて、もう全くあなたは分かりやすくて最高だわ」
「……分かっちゃうかな?」
ハリーは照れたように頭をかく。

「もう僕は恋しちゃってます!って全身で言っているようなものよ」
「でもこの髪型だけはどうしようもなかったよ。精一杯、櫛を入れたんだけど、ちっとも落ち着かなくってさ」
ハーマイオニーは大げさに首を振って否定する。
「何言っているの、ハリー。このくしゃっとした髪型がいいんじゃない!ものすごく母性本能をくすぐられるわ。手入れの行き届いた服に甘い香り。造作のいい顔に、明るくて澄んだエメラルドの瞳で、乱れた髪形から、ちらっと相手を見上げたら、落ちない子なんてまずいないわよ。安心して」
両手離しの褒め言葉に、ハリーははにかんだように微笑む。

ハーマイオニーはまるで姉のように、ハリーのネクタイのゆがみを直し、軽くローブの埃を払ったりして全身の形を整えて、最後にその黒髪に手を伸ばして指ですいて後ろに流してあげる。
ハリーはくすぐったそうにしながら、それらを素直に受けた。
「相手は誰なの、ハリー?」
「……んー、今はナイショ。だって昨日思いっきり振られた後の、今日からはそのリベンジなんだ。だから、うまくいったら報告するよ」
「寮が別とか、相手が上級生なのかしら?同じ寮の人や同級生や年下なら、あなたはあっさりしゃべるもの。きっととびきり甘い秘密の恋ね」
ハーマイオニーは小首をかしげて、フフフと笑う。

「その相手が誰だか知らないけれど、あなたの幸運を祈るわ」
そう言って、ハリーの鼻先にチュッとキスをした。
女神からのキスを受けて、ハリーも微笑んだ。
もちろん全く蚊帳の外のロンは、どちらの顔も交互に見回して、落ち着かない顔でオロオロとしたのは言うまでもないことだった。

作品名:T&J 作家名:sabure