No Title
珍しく雲雀さんがそう言った。オレもちょっとほろ酔いでいい気分だったので「そうですね」と返した。
珍しく自分から手を握った。やや間があって、雲雀さんも握り返してくれた。
何が楽しくて、どうして手を繋ぎたくなったのかはよく分からない。酒のせい、ということにしておこう。
二人とも酔っているのだきっと。
「ああずっと終わらなければいいのに」
このままずっと続けばいいのに。願うことは簡単だけど、それ以上のことはたとえ神様でも難しい。
何だかしみったれた気分になってきた。目も潤ってきた気がする。年だなあとしみじみ思う。
雲雀さんの手を少し強く握った。そしたら少し強く握り返してくれた。雲雀さんも同じことを考える、とは思わないけど、ほんの少しでもそうであったなら。ああだめだ、泣きそう。
楽しかった。手を握ったのは酒のせい。でも本当は名残惜しいのを隠したくなくなっただけ。
「・・・また、いつか、」
「いつかなんてこないよ」
そんな不確定なもの。いつまで経ってもやってこないよ。
「ひどい人だ」
「優しいだけの男がほしいならそっち行きな」
共に咬み殺してあげる。
オレは思わず目を丸くして、それから少し笑った。
ああ、ばかな人。そんなことを言われたらオレはどこにも行けないよ。こんな人に惚れたオレも相当ばかだ。二人揃って大馬鹿者だ。
手を軽くひかれる。
「ねえいつまで手繋いでるの」
手を繋いで、その次は?なんて目の前の恋人が言ってくるもんだから。やっぱりこの人に感傷なんて似合わないなと思いながら。
つま先少しあげて。オレの方からキスをした。